2025/11/02 更新

らんちゃんの卒園式と、3月生まれの上の子の誕生日を一緒にお祝い。
大塚まどかさんには、2人の子どもがいます。妊娠中から障害があると言われていた第2子のらんちゃん(小学6年生)は、1歳になって2型コラーゲン異常症関連疾患である、スティックラー症候群1型と診断されました。
2型コラーゲン異常症関連疾患の患者数は全国で約1500人と推定されていますが、治療法が確立されていません。
らんちゃんは低身長、重度の近視、軽度難聴などの症状があり、これらはすべて2型コラーゲン異常症関連疾患の代表的な症状です。
母親のまどかさんに、保育園や小学校生活のこと、らんちゃんの病気を知ってもらうための活動について聞きました。全2回インタビューの後編です。
成長に従い、低身長、軽度の難聴、重度の近視が

小学校では、吹奏楽部に所属。発表会の日も、椅子には足乗せ台が。
スティックラー症候群1型を含む、2型コラーゲン異常症関連疾患は、軟骨、目の硝子体、内耳などに症状が現れる、骨の病気の総称です。主な症状は、網膜剥離、重度の近視、口蓋裂、歯列不正、難聴、中耳炎、脊柱弯曲、低身長、関節変形などです。
――成長に従って現れた、らんちゃんの症状について教えてください。
まどかさん(以下敬称略) スティックラー症候群1型を含む、2型コラーゲン異常症関連疾患の代表的な症状に低身長がありますが、らんも低身長です。医師からは「成長に従い、身長はそこそこ大きくなる」と言われたのですが、らんは現在小学6年で身長は115cm。小学1年生ぐらいの子と同じです。
また軽度の難聴で、4歳から補聴器を使っています。2型コラーゲン異常症関連疾患は、難聴や中耳炎も特徴で、らんも滲出性中耳炎になりやすいです。呼びかけても返事をしないと「また滲出性中耳炎になっているな」とわかります。
この疾患は、重度の近視も特徴で、らんも3歳から眼鏡をかけています。3歳のときに眼科で検査をしたら左右0.3ずつぐらいで、眼鏡をかけて少しでも視力が育つようにしました。今は眼鏡をかけて左は0.8、右は1.2です。最近ではおしゃれに関心が出てきて「早くコンタクトにしたい」なんて言っていますが・・・。
保育園に年中でやっと入園。でも低身長で、年少クラスからスタート

小学5年生の運動会。障害物競争のらんちゃんの様子。
らんちゃんが保育園に入園できたのは、年中になってから。小学校は、合理的配慮を受けて、通常の学級に通っています。合理的配慮とは、障害のある子どもがほかの子と平等に教育を受けられるように、それぞれの障害特性や困りごとに合わせて環境調整などを行うこと。学校側が配慮を行うことが義務化されています。
――らんちゃんは、保育園に通っていたのでしょうか。
まどか 私が住む地域は、保育園入園が非常に困難な地域です。らんは整形外科、眼科、歯科、耳鼻咽喉科など通院が多くて、私は働くことができず、そのせいか保育園はずっと審査に落ちていました。保育園が無理なら、幼稚園に入れようと思ったのですが、らんの病気のことを話すと、やんわり入園を断られるんです。
やっとらんが保育園に入れたのは、年中の1月からでした。でも園長先生から、「大きな病気があって低身長だから」と言われ、1つ下の年少からスタートすることになりました。スティックラー症候群1型を含む、2型コラーゲン異常症関連疾患は知的な遅れはありません。そのためらんは、まわりの年少児よりも、いろいろなことができるし、話も上手です。事情を知らない保護者が、らんが作るブロックなどを見て、「なんで、あんなに上手なの?」とよく驚いていました。
――就学について教えてください。
まどか 小学校は、長男も通っている公立小学校の通常の学級です。らんは7歳のとき身長91.6cm。3歳児と同じぐらいの身長でした。入学前には、校長先生たちと面談をして、合理的配慮をお願いしました。
――合理的配慮は、たとえばどのようなことでしょうか。
まどか ちょっとした工夫や補助具があれば、らんは自分でできることが多いんです。そのため黒板の近くに踏み台を置いてもらったり、給食当番の白衣は小さいサイズを用意してもらったり、足乗せつきの椅子を用意してもらうなどです。
また入学したときは、和式トイレが多かったので1カ所を洋式トイレにしていただき、足乗せ台も置いてもらいました。小学3年生になると、校内のトイレは4分の3が洋式になったのですが、らんは和式トイレが近くにあっても、洋式トイレの使用を認めてもらっています。
ほかには、体が小さいので、重いものを持って歩くことは難しいです。そのためランドセルは、障害児用のセミオーダーのランドセルで、900gぐらいの軽量タイプを使っています。ランドセルの中に入れるのは教科書やノートは3冊ぐらいまで。水筒は重くて持って歩けないので、500mLのペットボトルのお茶を許可してもらっています。
ほかには、らんは生まれつき首の骨がずれていて、マット運動の前転や跳び箱、鉄棒などは、医師から禁止されているんです。そうしたことも小学校の先生には伝えていて、みんなが前転などを行うときは、代わりにほかの運動をしています。
走ることはできるので、持久走や徒競走は、みんなと一緒に走っています。らんも私も「できることは積極的に!」という考え方です。
病気のことをみんなに知ってほしくて、オリジナル絵本を制作

まどかさんが作・絵を手がけた、らんちゃんが主人公の絵本。
まどかさんは、らんちゃんを主人公にした絵本『知ってほしいな わたしのびょうき~2型コラーゲン異常症~』を2022年3月に発行しました。
――絵本を作ろうと思った理由を教えてください。
まどか まわりの人に、病気のことをわかってほしいという思いからです。
らんの病気のことは、保育園の入園申し込みや小学校入学のときはもちろん、新年度になって担任の先生が変わるたびに説明するのですが、まれな病気で、すぐに理解を得るのは難しいです。また口頭で説明しても難しい話になってしまって・・・。
そのため病気の説明や症状のこと、みんなに理解してほしいことなどを、絵本で伝えようと思ったんです。
――作・絵は、まどかさんなんですね。
まどか 私は、以前、スポーツメーカーで働いていて広報をしていたんです。仕事で、よくさし絵なども描いていたので、自分で絵も描いてみようと思いました。また小学校低学年の子どもが読んでも理解できる内容をコンセプトにしていたので、私が参加している2型コラーゲン異常症患者・家族の会のメンバーから「言葉がかたいよ。もっとかみくだこう!」などと言われて、何度か書き直しました。
――まどかさん自身、子どもたちに絵本の読み聞かせをしたりもしているのでしょうか。
まどか 私は小学校のボランティアで、読み聞かせ活動をしています。活動を通して子どもたちに、この絵本を読むこともあります。また学校などの図書館に置いてもらうように働きかけたりもしています。
将来は、服飾関係の仕事をすることが夢

絵本『知ってほしいな わたしのびょうき~2型コラーゲン異常症~』より。
らんちゃんは、自分の病気をネガティブにとらえず、将来の夢もあります。
――らんちゃんは、自分の病気をどのようにとらえていますか。
まどか らんは、自分の病気に治療法がないことを知っていますが、あまりネガティブにはとらえていないようです。
でも、何回からんに「私が病気でなければ、こんなにいろいろな病院に通院しなくて済むし、お母さんにも迷惑かけなかったのに・・・」と言われたことがあって。整形外科、眼科、歯科、耳鼻咽喉科など、通院が多くて、私自身、疲れてイライラしていたときに言われたので、反省しています。
――らんちゃんの将来の夢を教えてください。
まどか らんは、おしゃれが大好きで、将来は服飾関係の仕事がしたいそうです。らんは今、小学6年で身長は115cm。いつも低学年の女の子が着るサイズの服を着ていますが、らんからするとイマイチみたいで・・・。
以前、私が「将来、勉強して、自分で洋服が作れるようになったら、もっと自分らしさを出せるんじゃない?」と話したら興味をもったようです。
私も手に職をもってほしいので、らんの夢をこれからも応援していきたいと思います。
――まどかさんの目標や夢を教えてください。
まどか 私は、2型コラーゲン異常症患者・家族の会で活動しています。
2型コラーゲン異常症関連疾患は、指定難病ではありません。そのため公的な補助が受けられず、自己負担が大きいという課題があります。
そのため患者・家族の会では、指定難病に認定されて、日本のどこに住んでいても、小児から成人まで切れ目なく医療が受けられるようになることを目標に、活動を続けています。
【澤井先生から】らんちゃんの成長が、同じ病気をもつ方の希望に
らんちゃんは、ご家族と共に手術やリハビリを乗り越えながら、1歩ずつ力強く成長されています。その姿は同じ病気に向き合う多くの方にとって、大きな希望になります。お母さまも、これまで戸惑いや不安を抱えながらも前向きに歩んでこられました。どうかこれからも、無理をせず、周囲の支えを借りながら、らんちゃんと一緒に楽しい日々を過ごしていただければと思います。
お話・写真提供/大塚まどかさん 監修/澤井英明先生 協力/2型コラーゲン異常症患者・家族の会 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部
紹介した絵本『知ってほしいな わたしのびょうき~2型コラーゲン異常症~』は、2型コラーゲン異常症患者・家族の会の公式サイト内に、内容を一部抜粋した読み聞かせ動画があります。読み聞かせをしているのは、まどかさんです。サイト内では、絵本の販売も行っています。
また2025年度中に、プロによる朗読完全版を配信予定です。
「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。
澤井英明先生(さわいひであき)
PROFILE
医学博士。兵庫医科大学大学院看護学研究科特命教授。1984 年高知医科大学医学部卒。同年兵庫医科大学産科婦人科学入局。2006年京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻遺伝カウンセラー・コーディネータユニット准教授。2010年兵庫医科大学産科婦人科准教授。2017年同病院遺伝子医療部教授を経て、2025年4月より現職。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2025年10月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
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