花道を通る前に、自分だけの発奮スイッチ 難聴力士の幸せな相撲道

花道を通る前に、自分だけの発奮スイッチ 難聴力士の幸せな相撲道

2025年12月5日 6時00分

大相撲九州場所の序二段の取組に登場した爽=日吉健吾撮影

大相撲九州場所の序二段の取組に登場した爽=日吉健吾撮影


 大相撲九州場所3日目。東の花道を通る前、両耳の補聴器を静かに脇へ置く力士がいた。

 西序二段76枚目の爽(式秀部屋)。しこ名は「さわやか」と読む。大相撲のルールで、補聴器を外して土俵に上がる。彼にとって、これが「臨戦態勢」に入るスイッチだ。

 「支度部屋から出るときに気合を入れて、花道を通る前に『よし、行くか』ともう一度、自分を奮い立たせる」

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 平日の午前の取組が行われる場内の観客はまばらながら、「さわやか~」と大きな声援が飛ぶ。だが、25歳にとっての土俵上は「静寂」そのもの。歓声はおろか、呼び出しや行司の声も聞こえない。向き合うのはただ一つ。目の前にいる相手だけだ。

 立ち合いから思い切りぶつかる。自身より体重が20キロ以上重い相手にもひるむことなく、攻め続ける。粘って、粘って、寄り切り。同場所2勝目を挙げた。

 花道を下がり、置いていた補聴器を再び両耳につけ、ゆっくり息を吐いて言った。

 「やっぱり勝つと気持ちいいですね。相撲、楽しいです」

 本名は江塚薫。静岡県磐田市出身。生まれてまもなく、両耳が聞こえない先天性の感音性難聴と診断を受けた。普段は補聴器をつけて生活している。

 自身の境遇を悲観したことは一度もない。爽に言わせると、これが「自分の普通」だから。補聴器をつけるのも、「みんなが朝、起床することと一緒のような感覚ですかね」とまったく意に介さない。


リンク先は朝日新聞というサイトの記事になります。


 

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