2026-05-15

日本での補聴器購入者の満足度は、欧米と比較して3分の2というデータがあるなど、比べて決して高くありません。これは、適切な補聴器フィッティングがされていないことが背景にあります。こうした課題を解決するため、適切な補聴器フィッティングに必要不可欠な聴力測定や効果測定が可能な車両「ほちょうきカー」が開発されました。3月15日に開催された「補聴器フォーラム東海2026」で、どんな車両か体験してきました。
高度な遮音性能と吸音性能を備えた「音場測定環境」をコンパクトにパッケージ

補聴器を適切に調整する上で大切な聴力測定と効果測定には、必要な測定機器と音の反響を抑えた防音室が必要ですが、対応できる医療機関や補聴器販売店は限られています。
こうした背景を受け、MONET Technologies株式会社(以下「MONET」)は、耳鼻咽喉科の専門医や遮音、吸音部材メーカーらと共同で、聴力測定と効果測定が適切に行える車両を開発しました。
ワンボックスタイプの車両の中にどんな技術が詰まっているのか、日本赤十字社愛知医療センター 名古屋第一病院耳鼻咽喉科の医師 柘植勇人さん、MONET MaaS事業部の植草誠さんに紹介していただきました。
フィッティングは、補聴器にどんな役割を果たすのでしょうか?
柘植さん 「フィッティングとは、補聴器をその人の聴力や生活環境などに合わせることです。欧米と比較して、日本ではこのフィッティングが不十分な事が多いのです。また、補聴器には『聴覚リハビリテーション』という発想が大切です。初めて補聴器を装用するとさまざまな音をうるさく感じるのは自然な事であり、難聴によって発生した脳の変化が関わっています。これが、眼鏡と最も異なるポイントです。そのため、補聴器に対する不快感が改善するまで、高齢者では3カ月以上かかる場合もあります。こうしたことを理解していただいたうえで、最適なフィッティングのゴールに向けて繊細な調整を進めるには、補聴器を装用した状態での効果測定を繰り返すことが必要です」
フィッティングをする車両には、どのようなことが求められるのでしょうか?
柘植さん 「言語聴覚士や補聴器技能者が適切なフィッティングを行うには、正確な測定が必要です。そのためには高い遮音性が求められるため、車内は二重構造の防音を施しました。遮音性能は聴覚医学会が推奨する基準を大きく超えました。また、室内の残響時間は欧米の基準を参考に0.5秒以下/ 500Hzを目指しました。残響時間とは、音が止まってから60デシベル減衰するまでの時間で、この時間が長いと音が反響してしまい、正確な効果測定ができないからです。今回は専門の音響測定ができる環境で、車内騒音レベルや残響時間などの目標値をクリアしていることを確認しました」


測定方法の例、車内騒音レベル
通常、こうした環境は医療機関などの専用の測定室で確保されるものですが、それをワンボックスタイプ車両の中で実現していることが特長です。車が設置されていたのは、イベントホールのエントランスで車道に面する場所。車通りもあり、賑やかですが、車内に入ってみると驚くほど静かです。

実際に聴力測定をしている状況で、被験者の前には、当日行われていたイベントの映像がオンラインで流れており、遠隔診療も実現可能であることがわかります。
記事のポイント!
補聴器は、購入してすぐに快適に使えるとは限らず、一人ひとりの聴力や生活環境に合わせた細かな調整が欠かせません。この記事では、聴力検査や補聴器装用時の効果測定ができる車両「ほちょうきカー」を紹介しています。防音室に近い測定環境を車内に整えることで、医療機関や販売店に通いにくい人にも、より適切な補聴器フィッティングの機会を届けられる可能性が示されています。
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