2026/03/15 11:50
様々な細胞に変化できるES細胞(胚性幹細胞)から作った内耳の組織を平衡感覚に障害があるマウスに移植したところ、症状が改善したとの研究成果を京都大や藍野大(大阪府茨木市)のチームがまとめた。めまいやふらつきなどの平衡障害には根本的な治療法がなく、チームはES細胞と同様の機能を持つiPS細胞を使った人への治療を目標に掲げる。神戸市で開かれる日本再生医療学会で19日、発表する。
250万人の患者に「早く届けたい」
耳の奥にある内耳に障害が起こると、難聴のほか、激しいめまいやふらつきが生じる。平衡障害は、頭の傾きを感じる内耳の「有毛細胞」が加齢などで減少することが原因とされ、有毛細胞は一度傷つくとほとんど再生しないため、治療が困難だ。

内耳の「ミニ臓器」を移植するイメージ
藍野大の田浦晶子教授(耳鼻科)らのチームによると、平衡障害に悩む患者は国内に約250万人いると推定される。多くを占める高齢患者では、めまいによる転倒で足腰を骨折し、寝たきりとなるリスクが指摘されている。
チームはマウスのES細胞を使って、有毛細胞を含む内耳の組織(大きさ1~2ミリ・メートル)を作製。有毛細胞が減って絶えずふらついて回転するなどの症状があるマウスに、手術器具を使用して耳の穴から移植した。その結果、1か月後には回転せずに歩けるようになるなどの改善効果がみられたという。
チームは人のiPS細胞からも内耳の組織の作製に成功しており、人での臨床研究を目指している。難聴の治療として行われている人工内耳の手術では頭部の皮膚の切開が必要だが、内耳の組織は耳の穴を通じて移植する想定だという。
めまいの専門医でもある田浦教授は「人の治療に生かすには安全性の確認などのハードルがまだあるが、一生治らないと苦しむ患者にできるだけ早く届けたい」と話している。
iPS細胞を使った内耳の研究に詳しい藤岡正人・北里大教授
(分子遺伝学)の話 「マウスの行動に改善が認められ、移植による治療法の実現に近づく大きな一歩だ。耳から移植する手法は体への負担が少なく、今後の実用化に向け、さらなる研究開発を期待したい」
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