2026.09.17
葉山 梢

発達に特性のある子どもを対象に療育を行う、児童発達支援の現場を描いた漫画「エスプレッソ・コーラ 児童発達支援ももの木スクール」。4年前にインスタグラムで始まったこの作品は今年、KADOKAWA版として書籍化され、教育や医療の専門家からも高く評価されています。児童発達支援の実務経験をもつ原作者のほっかむりゆり子さんに、当事者、保護者、先生といったさまざまな視点から描くねらいについて聞きました。
話を聞いた人
ほっかむりゆり子さん
「エスプレッソ・コーラ」原作者
保育士、幼稚園教諭、小学校教諭、介護福祉士、児童発達支援管理責任者などの資格を所持し、障害児(者)の入所施設や児童発達支援で働いた経験をもつ。療育漫画「エスプレッソ・コーラ」、恋愛漫画「ペアリング・マッチ」をKindleで連載中。
誰も作らないなら自分で作る
――「原作版」はゆり子さんが自ら作画をしていますが、もともと漫画を描いていたわけではないと聞きました。
障害児入所施設や放課後等デイサービスで働きながら、インスタグラムなどで福祉について発信してきました。その中で最小限のイラストは描いていましたが、漫画自体は小学校時代に描いて以来、というか、ほぼ初めてという状態で始めました。約4年前から、最初はインスタグラムで描いていたものを、途中からKindle(電子書籍)に移籍した形ですね。
――描き始めたきっかけはどのようなことだったのでしょうか。
福祉の発信をしている中で、児童発達支援や療育現場を描いた作品ってないな、と思ったんです。当時も「リエゾン」などの児童精神科の医療の現場を描いた漫画はありましたが、その他は当事者の育児エッセーがあったくらいでしたね。支援者目線の漫画やドラマって、ないよね、あったら楽しいよね、あったらきっとこんな感じだよね、という「もしもの記事」を書いたら、フォロワーの方々が「それすごくいいね」と反応してくださったんです。でも、かといって誰かがそれを作ってくれるわけではないので、じゃあ自分で描いてみようか、という軽い気持ちで始めました。
「保育園はひどい」で終わらせてはいけない
――発達支援の先生、当事者、保護者、保育園の先生など、さまざまな視点から、それぞれのつらさや喜びが描かれているのが特徴だと感じました。
最初の頃はそこまで考えてなくて、第1話のダウン症や第2話のアンジェルマン症候群のエピソードは視点があちこちに飛んでいないんです。第3話でADHD(注意欠如多動症)のわたる君が保育園を転園せざるをえなくなる話を描いたときに、インスタグラムのDM(ダイレクトメッセージ)などを見ていたら「理解のない保育園だ」という風向きが少しあって。「お母さんとわたる君がかわいそう。保育園はひどい、こんな親子を追い出すなんて」という声もありました。
でも、「保育園はひどい」で終わらせてはいけない。向こうには向こうの視点があるということを見せないと、現場の保育園の先生が読んだときに自分たちの思いがなかったことにされて、ただただ「理解のない人たち」と描かれたと感じてしまうだろうな、と思ったんです。そんなふうに思われたら、こういう特性の子がいるよという情報も現場の先生たちに伝わらなくなってしまう。だから保育園の先生から見た視点も入れて、フェアに、それぞれに事情と視点があるから一概にここがダメとは言えないんだよ、という形で、多視点のスタイルがどんどん固まってきましたね。

「エスプレッソ・コーラ 児童発達支援ももの木スクール 1」から
――読者のコメントを参考にされることも多いのですか。
この描写がどう受け取られるかというところで、反応はけっこう気にしています。福祉の漫画なので、読んでくださる読者の方が当事者だったり関係者だったりすることが多い。その声を踏みにじるわけにはいかないなというところがあります。かといって読者の言うとおりに全部描くわけではないのですが、これを描いたらどう受け取られるか、というのは知っておきたいと思っています。
障害受容は千差万別
――作品の中では、保護者がなかなか子どもの障害を受け入れられない場面も繰り返し登場しますね。障害受容の難しさについて、どのように考えていますか。
個人差がものすごくある領域かなと思っています。診断がついたことで「よかった、これでなんとかなる」と前向きにすぐ切り替えられる方もいれば、障害の可能性が分かった時点でずんと落ち込んでしまう方もいる。それって親に愛情があるからすぐ受け止められるというわけでもないし、愛情がないから拒否しているというわけでもないんです。
世間体を気にして受け入れていないとか、親自身に障害への差別心があるのではないか、という意見もあるかと思います。でも、親御さんがたどってきた人生観だったり、子どもに対しての教育的な価値観だったり、周りの家族の状況だったり、いろんなものが含まれての障害受容なので、人によって千差万別。それに、根本的には「これからどうしよう」という不安や、親自身にできることがどれだけあるのかという問題も大きいのではないでしょうか。
記事のポイント!
ADHDの子どもが保育園を転園するエピソードをきっかけに、親子だけでなく保育園の先生にもそれぞれの事情や視点があることを描き、発達障害や療育の現場を一方向から決めつけずに捉える大切さを伝えています。
関連ページ
聞こえが気になる方は、以下のページも参考にしてください。
今の聞こえの状態を簡単に確認したい方へ
▶ 聞こえづらいと感じたときのセルフチェック
難聴の原因や種類を整理したい方へ
▶ 難聴とは?(原因・症状・種類)
まず何をすればよいか知りたい方へ
▶ 聞こえづらいと感じたときの対処法
補聴器の基本を知りたい方へ
▶ 補聴器の種類と選び方
気になる症状がある場合は
聞こえに不安がある場合は、早めに耳鼻咽喉科への相談をおすすめします。
