「悪気はないのに嫌われる」が一番つらい…“人と上手に距離をとれない子”に親ができること

「悪気はないのに嫌われる」が一番つらい…“人と上手に距離をとれない子”に親ができること

2026/01/24

友達に囲まれ孤立する子供のイラスト

集団生活になじめず泣いてしまったり、逆にお友達との距離が近すぎてトラブルになったり……。 「うちの子、コミュニケーションが苦手かも?」と感じることはありませんか? 子どもは誰もが発達の途中段階にありますが、その中でも特性のある「発達ユニーク」な子たちは、独自のつまずきを抱えていることがあります。

相手の表情(非言語コミュニケーション)を読み取るのが苦手な彼らに必要なのは、説教や注意ではなく、大人が優しく寄り添う「通訳」です。 今回は、誤解されがちな子どもの行動の背景と、親子の会話を通じて「自分を伝える力」を育むためのヒントをお伝えします。

『「発達ユニークな子」が思っていること』特集記事一覧はこちら

児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること 単行本(ソフトカバー) – 2025/8/22 精神科医さわ (著)

※本記事は、『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』(精神科医さわ/日本実業出版社)の一部を抜粋・再編集したものです。


まだ発達している途中の段階だから、大人と比べない

「幼稚園や学校などの集団生活になかなかなじめない」「話が通じにくい」「悪意はないのに、相手を怒らせてしまうことがある」など、発達ユニークな子のなかには、コミュニケーションになんらかの問題を抱えている子がいます。

そもそも、子どもというのは発達の特性のあるなしにかかわらず、大人になる過程で思考力や言語能力を伸ばしていくものです。

つまり、まだ発達している途中の段階です。

大人と比べて、自分の思いを言葉にして伝えることが苦手だったり、自分のなかの怒りや悲しみの感情を認められなかったり、相手がどう思っているかという感情をくみ取るのが難しかったり、人とほどよい距離をとるのが難しかったり……。まだ学んでいる最中ですから、コミュニケーションも未熟なのは自然なことです。

発達ユニークな子のなかには、とくにコミュニケーションでさまざまな難しさを感じていることが少なくありません。その特性は1人ひとりちがいますが、多くの子に見られるのは、スムーズな対人関係を築くのが難しいということです。

たとえば、わが家の長女は、はじめての場所に行くことや、はじめて会う人に対して、とても緊張の強い子どもでした。幼稚園に入園した当初は教室に入るだけでも大変で、「みんな入っているから入ろうね」などと声をかけても泣き叫ぶばかりでどうにもなりませんでした。


人と上手に距離をとれない子

とは言っても、発達に特性のあるすべての子が集団のなかに入っていけないというわけではありません。集団のなかに入れても、人と適切な距離をとるのが難しい子もいます。自分の好きなことをずっと話し続け、むしろ積極的に集団のなかに入っていくタイプの子もいます。

ただしその場合も、こちらがしゃべって、相手がそれに返して、またそれに自分が返して……という会話のキャッチボールを成立させるのは難しいケースもあります。

たとえば、好きな子や気になる子ができたとき、その子と話したい一心で距離が近くなりすぎてしまい、結果的に相手から拒否されてしまうことがあるのです。一般的には相手の表情やしぐさなどから「今、楽しそうに話をしてくれているな」とか「あれ、ちょっといやがっているかな?」といった感情を察知するものですが、発達に特性のある場合、こうした非言語的なコミュニケーションが苦手なことがあります。

反抗しているわけでも、相手を傷つけようとしているわけでもなく、そもそも“どう伝えていいかがわからない”という状態なのです。そのため、話が一方的になりがちだったり、相手がどう感じているかをあまり意識せずに話したりする子もいます。

その結果、相手が不機嫌な顔をし出しても本人は気づかずに話し続け、まわりのほうがハラハラしてしまうなんていう場面もあったりします。

ただ、みなさんに誤解しないでほしいのは、相手の気持ちを察するのが難しいことが必ずしも“無関心”ではないということです。特性がある子たちは、興味があることを表現したり、相手が興味を示すように伝えたりすることが言語的にも非言語的にも苦手なことがあるんだということを知ってもらいたいのです。


感情表現を丁寧に教えていく

自閉スペクトラム症(ASD)の特性を持つ子どものなかには、「視線が合わない」「表情が乏しい」「身振り手振りで感情を表現するのが苦手」など、独特な感情表現をする子もいます。しかし、こうしたことは悪意からの行動ではなく、脳の特性から起きていることなので、ほかの子と同じふるまいを強制するのはよくありません。

また、そういう子に「楽しんでる?」「困っていることはない?」などと聞いてみると、表情には変化がなくても「うん、楽しいよ」と返事が返ってくることも意外と多いです。感情表現のしかたが、ほかの子とちがうだけで、その子なりに楽しんでいることもあります。

ですから、ほかの子と同じようなコミュニケーションを強いるのではなく、「困ったことがあったら、手をあげて教えてね」とか「参加したいときは手をあげてね」などのように、本人が自分の気持ちや意思を伝えやすい方法やルールを用意してあげてください。

また、子どもが混乱しているときには、「今、怒っているの? こわいの? 悲しいの?」「さっきはなにがいやだったのかな?」などとやさしく聞いて、その子が感じている気持ちを言葉にするということをサポートしていくのもおすすめです。

視覚からのほうが伝わりやすいなら、「イライラしている」「こわい」「悲しんでいる」「楽しい」などの文字やイラストを描いた紙などを使うのも有効です。

まわりの大人がやさしく寄り添い、言葉を補うことで、子どもは少しずつ自分の感情を言葉にし、自分自身を伝える力を身につけていくことができます。

家庭のなかで安心しておだやかなコミュニケーションが育まれる。その経験は子どもが社会のなかで自分らしくすごせる力へとつながっていくのです。

言葉にするのが苦手な子には、“ゆっくりでいいよ”という気持ちで、会話を楽しみましょう


今回紹介したのはこちら

児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること 単行本(ソフトカバー) – 2025/8/22 精神科医さわ (著)

『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること 』精神科医さわ/日本実業出版社

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『子どもが本当に思っていること』著者で、YouTubeチャンネル登録者数10万人の人気の児童精神科医さわ先生による、発達に特性のある「発達ユニークな子」が感じている困りごとがわかる一冊。発達のユニークさは、学習の場面にも、感情の表現にも、人間関係の築き方にも、さまざまなかたちであらわれます。それらはときに、「わがまま」「怠けている」「空気が読めない」と誤解され、子ども自身が自信をなくしてしまうこともあります。でも、そのユニークさには、1人ひとりの子どもが持っている「その子らしさ」「その子らしい味」がたくさん詰まっています。私たち大人ができることは、子どもたちを型にはめることではなく、その子のユニークさを理解し、必要なサポートを届けることです。本書では、発達の特性ごとに章を分けて、それぞれの場面で子どもたちがどのような思いや困りを抱えているのか、そしてそのときに周囲の大人がどのように関わることができるのかを、わかりやすく紹介。


【著者プロフィール】精神科医さわ


児童精神科医。精神保健指定医、精神科専門医、公認心理師。1984年三重県生まれ。開業医の家庭に生まれ、薬剤師の母親の英才教育のもと、医学部を目指す。藤田医科大学医学部を卒業後、精神科の勤務医として、アルコール依存症をはじめ多くの患者と向き合う。母としては、発達特性のある子どもの育児に苦労しながらも、シングルマザーとして2人の娘を育てている。長女が不登校となり、発達障害と診断されたことで「自分と同じような子どもの発達特性や不登校に悩む親御さんの支えになりたい」と勤務していた精神病院を辞め、名古屋市に「塩釜口こころクリニック」を開業。老若男女、さまざまな年代の患者さんが訪れる。開業直後から予約が殺到し、現在も毎月約400人の親子の診察を行っている。これまで延べ3万人以上の診察に携わっている。2023年11月医療法人霜月之会理事長となる。著書に『子どもが本当に思っていること』(日本実業出版社)、監修に『こどもアウトプット図鑑』(サンクチュアリ出版)がある。


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