ミニカーで遊ぶ男の子

【2歳・3歳のことばの遅れ】語彙数だけではわからない。言語聴覚士 原先生が教える家庭でできる5つのコツ

2026.9.16

ミニカーで遊ぶ男の子

言語聴覚士として、子どものことばの問題に向き合ってきた原哲也先生は、ことばの遅れを心配する保護者が知りたいことは、大きく言って3つあると言います。それは「なぜ遅れているの?」「私のせい?」「家で何ができる?」ということです。この記事では、この質問にお答えしながら、最新のことばの研究結果や、ご家庭で実践できる声かけのコツをご紹介します。


ことばの役割は多様

ことばの役割は、人に何かを伝えることだけではありません。でき事を名づけ、感情をとらえ、考え、想像し、人とつながるための道具でもあるのです。

例えば「悲しい」ということばがわかることで、子どもは自分の中の「感情」に気づき、この気持ちが「悲しい」なんだと理解します。すると子どもは自分の感情を人に伝えられるようになります。

そして「悲しい」がわかるからこそ、「悲しい」と言う友だちに共感でき、泣いている友だちを見て「悲しいのかな」と気持ちを想像できるようになります。他者の気持ちを想像し、共感できることは大切な力です。2~12歳の子ども6万2,120人を対象とした研究でも、言語能力と社会的な力には関連があることが示されています。

 

子どもの働きかけに大人が反応することで、ことばが身についていく

ことばの獲得の始まりは「子どもの働きかけに相手が返すこと(赤ちゃんが手を伸ばしたら『ほしいの?』と応じるなど)」です。

次いで、大人と子どもが同じものを見て共有し、そこにことばを添えるやり取り(「共同注意」と言います)が育ちます。例えば子どもが犬を指さしたら、大人が子どもの指さす先を見て「ワンワンいたね」と返すなどです。

指をさす小さな子

共同注意を重ねる中で、体験にことばが何度も何度も結びつき、赤ちゃんの中で音に意味が生まれます。指さしや身振りも大切です。幼児期の身振りはその後の言語能力を予測する情報になると言われています。

 

語彙数だけでは、ことばの遅れはわからない

ことばの遅れの目安として「2歳でことばがほとんど出ない」「3歳で二語文が出ない」というものがあります。
私がことばの発達相談を担当してことばの発達状態を見るときは、語彙数だけでなく次のような点を確認します。

①聞こえや呼びかけへの反応
②ことばの理解
③人と同じものを見て共有するか
④指さしや身振り
⑤まねや遊び
⑥声、単語、二語文へと表現がどう変化しているか
⑦ことばを人に伝えたり、人とのやり取りの中で使えたりしているか

ことばが遅れる原因はさまざまです。難聴、知的障害、ASD(自閉スペクトラム症)、脳・神経疾患、遺伝性疾患など、言語発達の遅れを伴う医学的な状態はいくつもあります。

また、こうした既知の医学的原因はないのに、ことばの理解や文を作って話すことが難しい状態が長く続く「発達性言語症(DLD)」もあります。

お母さんに抱っこされる男の子


「親がもっと話しかければよかった?」 最新研究が教えてくれること

子どものことばの遅れについて、自分を責める保護者は少なくありません。では親の関わりは、本当に子どものことばの発達に影響するのでしょうか。

ハーバード大学心理学部で言語発達の研究を行うCoffeyらは2025年、71本の研究、4,760人の子どものデータをまとめて分析しました。その結果、親がどのくらい話すか、どのくらい多様なことばを使うか、どのくらい長く話すかと、子どもの言語能力には、たしかに関連がありました。

ただし、その関連の大きさは子どもの言語能力の個人差の約4〜7%に相当するものでしかありませんでした。つまり、親の話しかけは子どものことばと関係する一つの要素ですが、ことばの発達の違いをそれだけで説明できるわけではありません。

 

ことばが遅れていても、家庭でできることはある

ここで皆さんに知っていただきたい大切なことがあります。それは、ことばの遅れの要因が何であれ、今、ことばが遅れている状態であってもそれに対して親にできることがある、ということです。

そのことは近年の研究でも確かめられてきました。子どもの興味や発信に合わせて、「待つ」「応じる」「ことばを少し広げて返す」関わり方を取り入れた代表的な支援法の一つにEMT(Enhanced Milieu Teaching)があります。

2025年の研究レビューでは、EMTを扱った46本の研究、計1,590人の子どもの結果がまとめられ、EMTの子どものことばやコミュニケーションへの肯定的な効果が報告されました。

また、2026年には発達性言語症(DLD)リスク児108人を対象に、専門家が親に関わり方を教え、親子のやり取りをコーチする研究が行われ、その結果、親を指導したグループの子どもでは、単語理解や文法の一部で良好な結果が出ました。

 

家庭でできる5つのコツ

ことばの遅れが見られる子どもには、先ほどのEMTのようなことばがけをしてあげたいものです。今回は、家でできることばがけのコツ5つをお伝えします。

それは じっと見る/待つ/合わせる/少し足す/楽しむです。

じっと見る:大人が教えたいものではなく、子どもが見ているものを見る。
待つ   :すぐに先回りせず、少し待つ
合わせる :子どもの気持ちのことばを合わせる
少し足す :視線でも、指さしでも、声でも、伝えてきたら受け取り、「一つだけ」情報を足して返す
楽しむ  :一緒の時間を楽しむ

 

注意したいのは、家庭を「訓練室」にしないこと

「これ何?」「何色?」「言ってごらん」と質問を続けると会話がテストのようになります。まるでことばの訓練室です。少しも楽しくありません。

それより、お風呂で子どもが「あっ!」と声を出したら「あったかいね」と声をかけましょう。子どもの体験に、子どもが今感じていることに、ことばを添えるのです。

食事、着替え、お風呂、散歩、遊び。ことばが育つ瞬間は毎日あります。家庭を「ことばの訓練室」にするのはやめましょう。

 

記事のポイント! 

子どものことばの遅れは、「何語話せるか」だけでは判断できません。聞こえや呼びかけへの反応、ことばの理解、指さしや身振り、人とのやり取りなど、幅広い視点で発達を見ることが重要です。難聴を含むさまざまな原因の可能性とともに、「じっと見る・待つ・合わせる・少し足す・楽しむ」という家庭でできる5つの関わり方を、具体例を交えて紹介しています。

関連ページ 

聞こえが気になる方は、以下のページも参考にしてください。

今の聞こえの状態を簡単に確認したい方へ
▶ 聞こえづらいと感じたときのセルフチェック

難聴の原因や種類を整理したい方へ
▶ 難聴とは?(原因・症状・種類)

まず何をすればよいか知りたい方へ
▶ 聞こえづらいと感じたときの対処法

補聴器の基本を知りたい方へ
▶ 補聴器の種類と選び方

 

気になる症状がある場合は  

聞こえに不安がある場合は、早めに耳鼻咽喉科への相談をおすすめします。 


原文掲載元はこちら

 https://hugkum.sho.jp/811797

Back to blog

Leave a comment