デフリンピック 手話言語広げる契機に

デフリンピック 手話言語広げる契機に

2025年11月15日 05時05分 (11月15日 05時05分更新)

 聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」が15~26日、東京都を中心に開催される。大会は4年ごとで、日本で開かれるのは初めて。選手の活躍を応援し、手話の普及を図るなど共生社会を前進させる機会にしたい。

 大会には約80の国・地域から選手、役員ら計約6千人が参加し、21競技が実施される。都内のほか、サッカーは福島県、自転車は静岡県で行われる。スタートや審判の合図を光や旗で示すなど、音に頼らない競技運営となる。

 選手にはひのき舞台で、世界の仲間たちと競う醍醐味(だいごみ)を存分に味わってほしい。その輝く姿は、同じ障害のある子どもらに元気や勇気を与えるはずだ。

 生まれつき重い聴覚障害があると会話の習得は容易でなく、文字や文章も学びづらい。勉強やスポーツに取り組む環境は十分とは言えず、進学や就職、日常生活での苦労は想像に難くない。

 こうした生きづらさは、障害者自身の聴覚の不自由さに起因するというのが従来の「医学モデル」だが、近年は、社会の対応の遅れが原因だとする「社会モデル」に転換しつつある。デフリンピックを、日本社会から差別や偏見をなくす契機とすべきだ。

 行政や民間事業者に求められるのは「情報保障」である。障害の有無にかかわらず、誰もが同じ情報を得られるようにする考え方だ。声の情報を手話や文字に変える一方、手話を声や文字に変えて伝える取り組みが必要となる。

 国連総会は2017年、手話が音声と対等な言語だと決議した。日本国内でも今年6月、手話を言語と位置付ける手話施策推進法が成立。国と自治体に総合的な取り組みの実施を義務付けた。

 手話通訳者、手話が可能な教員ら専門人材の養成が急務だ。学校の授業や地域での講習会など、手話を学ぶ場も拡充したい。

 報道を担うテレビ各局は、手話通訳付きのニュース番組などを増やすべきだ。字幕放送が普及しているものの、文字を理解しにくい聴覚障害者もいる。災害時には、手話通訳の有無が生死を分けることもあるだろう。

 聴覚障害者は声を上げづらく、周囲の人々は外見から障害を見分けにくい。「耳の聞こえない人がそばにいるかもしれない」。一人一人の自覚が、共生社会を築く第一歩になるに違いない。


リンク先は中日新聞というサイトの記事になります。


 

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