
福岡モデル」は、人手不足の課題を抱える運輸、卸売・小売業の事業所が多いハローワーク福岡東(福岡市東区、宗像市などを管轄)で始めた。
同ハローワークに一般の求人票を出しているものの、採用数を充足できていない企業のうち、工夫次第で障害者の活躍が見込まれる企業に新規採用を提案していく。「雇用を検討したいが、どのような業務を任せられるのかがわからない」といった企業には、先進企業の見学を勧める。見学には県内で障害者の実雇用率の高い9社が協力予定という。
一方、障害者が働くイメージが持てず、雇用は難しいと考えている企業には、業務委託や施設外就労などの形で、福祉事業所に所属する障害者に仕事を担ってもらうことも提案する。実際の仕事ぶりを見てもらうことで理解を広げ、求人へとつなげる狙いだ。
厚生労働省では今年度、障害者雇用の実績のある企業を「相談援助事業者」として労働局ごとに認定し、他社への支援実績に応じて助成金が支払われる事業を展開している。「福岡モデル」の先進企業の中にも、この相談援助事業者に認定されている企業があるため、この事業も活用しながら、採用・定着を支援する。
就労を希望する障害者の数は年々増加。県内では2022年度に1万1635件の新規求職があり、10年で約4000件超増えた。ただ、就職率は低下傾向で22年度は42・1%(就職件数は4895件)にとどまった。
同局の小野寺徳子局長は、人手不足に頭を抱える企業が多いことも踏まえ、「業務の切り出しなど、工夫次第で障害者ができる仕事は多い。多様な人材が活躍していくための土壌づくりとして、障害者の『戦力化』に取り組んでほしい」と話した。
法定雇用率、県内半数が未達成
障害者雇用促進法に基づいて企業に義務づけられた障害者の「法定雇用率」は、今年4月から2・5%に引き上げられ、従業員40人以上の企業が対象となった。しかし、昨年6月1日時点(法定雇用率2・3%、従業員43・5人以上が対象)の調査では、県内企業の47・5%が未達成だった。
そうした中、通販大手「アスクル」の子会社「アスクルロジスト」の福岡物流センター(福岡市東区)では、従業員282人中65人に知的障害などがあり、障害者雇用で働く。荷物のピッキングや 梱包こんぽう など業務に広く携わり、リーダーを務める人もいるという。
同センターは2011年、初めて採用した難聴の従業員が短期間で離職したことをきっかけに、障害者雇用の仕組み作りに力を入れ始めた。採用後の「ミスマッチ」をなくすため特別支援学校を訪問。入社前に、数週間の実習に複数回参加してもらう体制を作った。就労支援機関とも連携し、就職後は「ジョブコーチ」の定着支援を受けるようにもした。
12年から毎年5人程度を採用し、定着率は8割にも上る。「福岡モデル」の先進企業にも選ばれており、同センターで障害者雇用を推進してきた坂井博基さん(46)は、「先入観から採用をためらう企業もあると思うが、実際に働く様子を見ると障害者のイメージが変わるはず。個人に向き合い、社会と連携して取り組みを進めることが重要だ」と話している。
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