上山崎雅泰2025年8月16日 8時00分

前田蓮斗選手の(左から)父・貴之さんと母・智佳さん=2025年8月15日午後6時16分、大阪府貝塚市、上山崎雅泰撮影
(16日、第107回全国高校野球選手権3回戦 岡山学芸館―山梨学院)
甲子園の舞台に立てますように――。今日も望む選手がいる。両親は、ともに耳が不自由。補聴器が欠かせない。右耳から伝わるスタンドの打球音を頼りに、アルプススタンドから声援を送る。
12日、松商学園(長野)と対戦した岡山学芸館(岡山)。3年の前田蓮斗選手の出番は回ってこなかったが、両親は応援席にいた。父貴之さん(46)と母智佳さん(40)。ともに聴覚障害2級で、左耳は全く聞こえない。右耳は補聴器を付け、話す人の口元を見ながら会話する。
ゆっくりと口を開け、簡単な手話を使ったり、身ぶりで表現したり。寮生活を送る蓮斗選手とのやりとりは、LINEの文字で。「野球を始めてから『やめたい、休みたい、野球は嫌』という言葉を(息子から)全く聞いたことがありません」と智佳さん。
「本当に心から野球が大好き、愛してると伝わります」
「代打でもいい。ぜひ甲子園に立つ姿が見たいです」
蓮斗選手は大阪府貝塚市出身。5人兄弟の次男で、小学校は軟式、中学では硬式の捕手だった。練習が終わると、率先して幼い弟のおむつを換えたり、風呂に入れたり。
高校に進む時、府内外の高校から声がかかったが、野球に専念する環境が整っている岡山学芸館に決めた。
迎えたこの夏、岡山大会では3回戦で捕手として1試合出場したが、その後はベンチを温めている。
次のチャンスは16日。第2試合で山梨学院(山梨)と対戦する。前日の練習後、蓮斗選手は「勝ちにいく」と言った。「ベスト8をかけた大事な1戦。出場できれば自分のできることを精いっぱい、力を出したい。家族には結果で恩返ししたいです」
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