#手話 #大屋あゆみ #FMぎのわん
長濱良起(ながはま・よしき)
フリーランス。沖縄の音楽シーンやエンタメシーンを中心に幅広く書いていきます。新聞記者時代も含めてこれまで1500本ほど記事を書いてきました。音楽関係では高校大学とバンドに勤しみ、2018年にヨシキカーニバルとして活動開始。ウガンダで校歌を作ったことがあります。
一番好きな手話「I LOVE YOU」で笑顔を見せる大屋あゆみさん=1月10日、宜野湾市喜友名のFMぎのわん
手話の世界でも“方言”があり“若者言葉”があることをご存じだろうか。「手話コメディ劇団アラマンダ」の座長で、ライブ配信映像によりろう者も楽しめるラジオ番組のパーソナリティーでもあるお笑いタレント・大屋あゆみさん。両親がろう者で手話が第一言語だったという大屋さんは、父親との会話の中で、沖縄独自の手話表現に触れてきた。「しまくとぅばがなくなりつつあって保存の動きが進む中で、同じように沖縄の手話も残していかなければと思っています」と話す。どんな沖縄の手話があるのだろうか。
それぞれ違う! 沖縄の米、犬、ピンク
例えば、「米」。全国的に使われている手話では、口元をつまむような動作で表現されるが、沖縄では手の平を上に向けて親指と小指をくっつける。言葉に訳したら同じ「米」でも、「東北のお米」と「伊平屋のお米」のようなニュアンスの違いが感じられて興味深い。

全国的に用いられている「米」

沖縄で用いられている「米」
「犬」も違う。全国的には両手を頭の上部に乗せて耳のようにするが、沖縄では両手を垂れ下げるように前に出して、人間に甘えているような仕草をする。「なんでですかね? 不思議ですけどね」。これはさながら、「柴犬」と「琉球犬」のような姿を想像してしまう。

全国的に用いられている「犬」

沖縄で用いられている「犬」
「これは消えつつある」と大屋さんが強調するのが「ピンク」。全国的には、両手を合わせて丸い形を作り桃を表現するが、沖縄では両手の親指と中指をピンと弾く。「私たちの親世代がいなくなったら、これを使う人はいなくなると思います」。沖縄で独自に発達してきた手話の方言に、愛着が湧いてくる。

全国的に用いられている「ピンク」

沖縄で用いられている「ピンク」。特に消滅の危機にあるという
「ヤバい」ってどう表現?
手話には、若い人しか使わないものもあるという。大屋さんは「私はちょっと、恥ずかしくて使えないです」というのが「ヤバい」という意味を示す手話だ。「指文字で『や』を二つ重ねて、『やの倍』で『ヤバい』なんですよ」

指文字の「や」を重ねて「ヤバい」
手話は、豊かな表情で会話することも特徴の一つだ。大屋さんいわく「手話は顔も文法なんですよ」。まるで、音声言語で強弱や抑揚を付けて細かなニュアンスや真意を伝えるように、表情が同じような役割を果たしている。
健聴者の手話への関心にも一役
「大屋あゆみの手話ラジオ」で、映像の配信もしながら、ろう者も一緒に楽しめるように番組を届ける大屋あゆみさん=1月10日、宜野湾市喜友名のFMぎのわん
自身が手話を交えて話す“見えるラジオ番組”の「大屋あゆみの手話ラジオ」(FMぎのわん)では、県内外のリスナーから「自分も手話検定を頑張る」などのメッセージをもらう。「ろう者も楽しめるラジオ」という枠組みを超えて、健聴者が手話に興味を持つきっかけを生み出している。
劇団アラマンダのメンバーである芸人仲間も自発的に手話の技術向上に励む。生放送中など周囲が声を出せない状況の時は、マネジャーが手話で大屋さんに合図や指示を出すなど「言語としての手話」を便利に使っている。
筆者も大屋さんの動きを見ながらいくつか覚えてやってみた。新しい言語を覚えたうれしさと、手でダンスをしているような楽しさがある。新しい趣味に手話、いかがだろうか。
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