生まれつきの「難聴」6歳女の子…音楽は希望 成長や発達を支える「音楽療育」の可能性 北海道

生まれつきの「難聴」6歳女の子…音楽は希望 成長や発達を支える「音楽療育」の可能性 北海道

2025年4月27日 8:31

先生とピアノで音を聞く竹田陽菜ちゃん


新生児のおよそ1000人に1人が先天性の「難聴」といわれています。

音が聞こえにくい子どもにも音楽を楽しんでほしい。

子どもの成長と発達を音楽で支える取り組みを取材しました。


新生児の約1000人に1人が「先天性の難聴」

小さな手でピアノを弾く女の子。札幌市に住む竹田陽菜ちゃん

小さな手でピアノを弾く女の子。

札幌市に住む竹田陽菜ちゃん6歳です。

(父・宏平さん)「学校どうだった?」

(竹田陽菜ちゃん)「楽しかった」

ランドセルを背ランドセルを背負う

この日は小学校の入学式。

(記者)「(ランドセルは)何色にしたの?」

(竹田陽菜ちゃん)「ラウールの色だから白にした」

アイドルが大好きな普通の女の子ですが、陽菜ちゃんは生まれつき音が聞こえにくい「難聴」です。

生まれたばかりの竹田陽菜ちゃん

(父・宏平さん)「障害のある子どもがいることはわかっていたが、まさか自分の子どもが障害を持って産まれてくると思わなかった」

(母・真弓さん)「こういうことをしなければよかったのかなとか、ただ自分を責めて毎日泣いていたのは覚えています」

新生児のおよそ1000人に1人が先天性の難聴といわれています。

親子三人

陽菜ちゃんの難聴がわかったのは生後1週間のときでした。

(父・宏平さん)「入院中に新生児のスクリーニング検査があって。ちょっと反応が良くないと言われて難聴だとわかった。お腹にいたときからいっぱい話しかけるとかをやっていたけど、聞こえていなかったのを考えるとショックだった」

人工内耳手術後の竹田陽菜ちゃん
イラスト「人工内耳の仕組み」


補聴器をつけてもよく聞こえなかったため、1歳の時、人工内耳を装着しました。

人工内耳は音を電気信号に変え、直接、脳の神経を刺激する装置です。

人工内耳をつけてから音は聞こえるようになりましたが、先天性の難聴は言葉の発達が遅くなる可能性があります。


成長を支えたのは「音楽」

笑顔の竹田陽菜ちゃん

そんな陽菜ちゃんの成長を支えてきたのが、音楽です。

(父・宏平さん)「とにかく音楽はすごく楽しそうにやっていたので、そういう好きだと思うことをやることで、自分の能力の発達に役に立つならすごくいいなと思った」

札幌市厚別区のデイサービス

札幌市厚別区のデイサービスです。

(保育音楽療育士 永井里奈さん)「これから音楽の時間を始めます」

保育音楽療育士の永井里奈さん。

保育音楽療育士の永井里奈さんと陽菜ちゃん

音楽を通して子どもの成長や発達を促しています。

陽菜ちゃんは0歳のころから永井さんから「音楽療育」を受けてきました。

最初のレッスンはピアノです。

鍵盤に色を付けて視覚的に高低差を判断
人工内耳をする陽菜ちゃん


一般的に人工内耳は、音楽の高低差が聞き取りにくいといわれています。

永井さんは鍵盤に色を付け、視覚的に音の違いを身に着けさせます。

太鼓をたたく陽菜ちゃん
ベルを鳴らす陽菜ちゃん

さまざまな楽器に触れて音の違いやリズムを覚えます。

(保育音楽療育士 永井里奈さん)「具体的に言うと、ことばの記憶・語彙の習得、雑音下での聞き取り。音楽を続けるとそういうところにすごく効果的」


色の違いで音を区別 少しずつ発音できるように

2歳のころの陽菜ちゃんのレッスン

これは2歳のころの陽菜ちゃんのレッスンです。

体全体を動かし、色の違いで音を区別させます。

当初は、口を開きますが声をうまく出せていないのがわかります。

3歳の陽菜ちゃん

3歳の陽菜ちゃん。

色のついた鍵盤を弾きながら、徐々に声を出して音の違いを理解します。

4歳になると、楽器をたたきながら歌詞を少しずつ発音できるように

4歳になると、楽器をたたきながら歌詞を少しずつ発音できるようになりました。

(竹田陽菜ちゃん)「メロンパン焼けましたよー」

そして、6歳になった陽菜ちゃん。

楽器を使いながらはっきりとした発音で歌うことができるようになりました。

6歳になった陽菜ちゃん
太鼓をたたく6歳になった陽菜ちゃん

(母・真弓さん)「1つください」

(竹田陽菜ちゃん)「はいどうぞ」

(保育音楽療育士 永井里奈さん)「がんばりました」

音楽のレッスンを終えた陽菜ちゃん


音楽のレッスンを終えた陽菜ちゃん。

(竹田陽菜ちゃん)「チョコですよー、バニラは?」

休憩時間は職員とおしゃべりに夢中です。


難聴でも音楽の楽しさや豊かさを…「音楽療育」の可能性

大学で音楽療育士の資格を取得した永井さん
永井さん

大学で音楽療育士の資格を取得した永井さん。

難聴の子どもたち25人の成長を音楽でサポートしています。

レッスンに使う教材は、子どもの特性に合わせて一つ一つが手作りです。

(保育音楽療育士 永井里奈さん)「難聴の子どもは、リズムで言葉を発音できるようになったりとか。太鼓を使って口だけではなく体全部にリズムを入れたり。子どもが楽しんでやりながらレベルが上がっていく」

北翔大学 伏見千悦子准教授

専門家は音楽療育の可能性をこう指摘します。

(北翔大学 伏見千悦子准教授)「歌詞が聞こえるなら、その歌詞を何回も聞いているうちに歌いたくなって言葉が出るかもしれないし、音楽が扉を開けるというか、何かきっかけが音楽が促すものにあるのではないか」

母親と陽菜ちゃん

陽菜ちゃんも音楽の力で日々成長を続けています。

(母・真弓さん)「当初はしっかり発音できなくて、やっぱり友達との会話も難しかったが、音楽を通して歌からいろいろ言葉を覚えたりして、歌詞とかも指文字で教えたら発音がしっかりできるようになって、歌を通して成長している」

難聴でも音楽の楽しさや豊かさを知ってほしい。

障害がある子どもとその家族にとって、音楽は希望の光となっています。

最終更新日:2025年4月27日 8:32


リンク先はSTV NEWSというサイトの記事になります。


 

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