2026年6月22日 18時10分
中村有紀子

札幌真栄ー札幌手稲 四回、二死満塁のピンチを迎えて、マウンドで指示をする札幌真栄の遊撃手酒井大和(左から4人目)=札幌麻生、加藤丈朗
「みんなで大和を支えていこう」。チームで決めたことだった。
札幌真栄の酒井大和主将(3年)は両耳が聞こえにくい。近くで話しかけられれば問題はないが、遠くからの声や、騒がしい場所では聞き取りづらくなる。
小学2年生の聴力検査で引っかかり、感音性難聴と診断された。原因ははっきりしなかった。
つらかったのは中学時代だ。「人と違うのが嫌で、周りの目が気になった」。不満をどこにぶつけていいのかわからず、母にきつくあたった。母は何度も「ごめんね」と謝った。「本当に申し訳なかった」と振り返る。
小学生で始めた野球を続け、高校でも野球部へ。試合での活躍が評価されて主将を任された。
だが、壁にぶつかった。
監督が酒井主将に指示したことがチームに伝わらないことが続いた。練習メニューや、実戦練習でのポジションをチームが把握していなかった。
監督の指示が聞き取れなくても聞き返せずに「はい」と答えてしまっていたことが原因。難聴のことは監督に伝えていたが、「恥ずかしくて、あまり言いたくなかった」と話す。
「耳のことから逃げないようにしよう」。わからないときには聞き返すようにした。チームの一体感も高まる。「みんなで酒井主将をフォローしていこう」
グラウンドの離れた場所から酒井主将に声を掛けるときは、仲間が声をつなぐ。聞こえていなさそうだと感じたら、何度も言い続ける。
その冬には、工藤将斗投手(3年)が副キャプテンにつき、酒井主将の隣で監督の話を一緒に聞くようになった。
工藤投手は「大和は雰囲気が悪くなっても人一倍声を出してくれる。みんな頼りにしている」と話す。
22日の初戦。ピンチのときには工藤投手の耳に、「まずはストライク」という遊撃手の酒井主将の声が届いた。「バックを信じようという気持ちになれた」
最大の危機は四回表の2死満塁。足をつってマウンドを降りたが、後続の野田鼓哲投手(2年)が得点を許さない。五回には、酒井主将の犠打で走者を進め、DHで出場を続けた工藤選手の二塁打、中島斗真選手(2年)の本塁打などで3点を奪った。
支え合ってつかんだ一勝。酒井主将は「仲間に支えられて、プレーができている。仲間を大事にしながら、次の試合をがんばりたい」。
記事のポイント!
遠くの声や騒がしい場所で聞き取りづらさを抱える札幌真栄の酒井大和主将。聞き返せずにいたことでチーム内の情報共有に課題が生じましたが、自ら「わからないときは聞き返す」と向き合い方を変え、仲間も声をつなぐなどして支えました。難聴を一人で抱え込まず、周囲と伝え合うことの大切さが伝わる記事です。
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原文掲載元はこちら
https://www.asahi.com/articles/ASV6Q2SZYV6QIIPE011M.html?iref=sp_photo_gallery_bottom
