障害年金の支給傾向と仕組みの理解で、支援制度の実態を把握しよう
2025.06.07 06:00 公開
執筆者村岸 理美
目次
1. 【精神障害が最多】診断書別に見る障害年金の支給実態
1.1 【新規裁定】およそ7割が「精神障害・知的障害」
1.2 【再認定】継続的な支援の中心も「精神障害・知的障害」
2. 障害年金のポイント
2.1 障害年金の仕組み
2.2 令和7年度4月から改定された年金額とは
3. 正しい知識を持つことが自分自身や大切な人を守ることにつながる
参考資料
障害年金制度は、生活や就労に困難が生じたときに支える大切な社会保障のひとつです。最近、「不支給の増加」といった報道もありましたが、まずは制度の全体像を知ることが重要です。障害年金は一定の条件を満たし、自ら申請して認定を受けることで受給できる制度です。今回は令和5年度の「障害年金業務統計」をもとに、新規裁定や再認定の状況をひもときながら、制度の基本や支給額の仕組みについて解説します。
1. 【精神障害が最多】診断書別に見る障害年金の支給実態
障害年金を受給するためには、受給資格がある人かどうか認定されなければいけません。初めて障害年金受給の申請をする件数を「新規裁定」といいます。また、すでに障害年金の受給者が引き続き年金をもらうために申請をする件数を「再認定」といいます。
障害年金は、どの障害が多く支給されているのでしょうか?
年金機構が令和6年9月に発表した「障害年金業務統計(令和5年度決定分)」の診断書の種類別支給件数についてみていきましょう。

令和5年度 診断書種類別件数①診断書種類別支給件数
障害年金の【新規裁定】と【再認定】に分けて、それぞれのポイントを解説していきます。
1.1 【新規裁定】およそ7割が「精神障害・知的障害」
令和5年度の新規裁定では、全体のおよそ70%を「精神障害・知的障害」が占めており、とくに障害基礎年金では8割以上がこの分類に該当しています。一方、外部障害や肢体障害もそれぞれ15%以上を占めており、身体的障害も一定の割合で支給されています。眼や聴覚障害、内部障害などは構成比としては比較的少数にとどまっていますが、多様な障害に対応している実態がうかがえます。
1.2 【再認定】継続的な支援の中心も「精神障害・知的障害」
再認定においても、「精神障害・知的障害」が最多で全体のおよそ75%を占め、障害基礎年金では8割近くを占めています。これは、継続的な支援を要する精神障害の特性を反映しています。次に多いのは肢体障害などの外部障害で、安定的な継続支給が多くを占めていることがわかります。また、糖尿病などの内部障害も再認定件数全体の約11%を占めており、長期にわたる経過観察と支給が行われていることが読み取れます。
令和5年度の障害年金では、新規裁定・再認定ともに「精神障害・知的障害」が最多で、肢体障害や内部障害も一定の割合を占めていることがわかりました。
では、「実際に障害年金はどのような仕組みで、それぞれの障害等級でいくらもらえるのか?」
障害年金の仕組みと年金額についてみてみましょう。
2. 障害年金のポイント
障害年金は、病気やけがにより生活や仕事に支障が出たときに支給される公的年金で、現役世代の所得保障としての役割もあります。障害年金の受給者として認定されるためには、初診日の年金加入状況や、障害認定日における障害の程度など、一定の条件を満たす必要があります。
2.1 障害年金の仕組み
初診日に国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は等級により「障害厚生年金」または両方が支給されるため、障害年金は2階建ての構造になっています。
障害年金は2階建て

筆者作成
障害年金の仕組みについて、ポイントを2つにしぼって解説します。
等級によって受け取れる年金の種類が変わる
障害の重さを示す等級によって、もらえる年金の種類が変わります。1級と2級は、国民年金でも厚生年金でも支給されますが、3級と障害手当金は厚生年金のみに用意されている制度です。そのため、障害の程度が軽い場合は、自営業など国民年金加入者は支給の対象外となることがあります。
扶養家族がいると加算がある
障害年金には、受給者に扶養する子どもや配偶者がいる場合に、年金額に加算される制度があります。たとえば、障害基礎年金では「子の加算」があり、障害厚生年金では「配偶者加給年金」が設定されています。家族構成によって、支給額が増えることがあるのも障害年金の大きな特徴です。
2.2 令和7年度4月から改定された年金額とは
障害年金の金額は、物価や賃金の変動に応じて毎年見直しされます。
障害基礎年金の年金は1級と2級のみ
障害基礎年金の年金額(令和7年4月分から)

出所:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」
令和7年4月からの障害基礎年金の年金額は、1級が年額103万9625円(一部は103万6625円)、2級が83万1700円(一部は82万9300円)に設定されています。昭和31年4月2日以降に生まれたかどうかで金額に若干の差があります。扶養する子どもがいる場合は加算があり、2人まで各23万9300円、3人目以降は各7万9800円が年金に上乗せされます。等級や家族構成によって受給額が変動します。
障害厚生年金の年金は1級・2級・3級
障害厚生年金の年金額(令和7年4月分から)

出所:日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」
令和7年4月からの障害厚生年金は、会社員や公務員が対象で、加入期間中の給与額に応じて決まる「報酬比例」の年金額が基本です。1級はその年金額×1.25に配偶者加給年金(23万9300円)が加算され、2級も同様に加算があります。3級は報酬比例額のみ支給され、最低保障額は62万3800円(または62万2000円)です。報酬比例とは、加入期間と給与水準をもとに計算される仕組みです。なお、障害の程度が3級より軽い場合は、一時金として「障害手当金」が支給されることもあります。
3. 正しい知識を持つことが自分自身や大切な人を守ることにつながる
今回は障害年金の支給傾向などを読み解きながら、障害年金の基本的な仕組みや年金額について解説しました。
まとめると、
- 認定件数は特定の障害に集中している傾向がある
- 障害年金は「2階建て」の構造で、等級や加入状況により種類が変わる
- 加算制度や報酬比例など、受給額は家族構成や働き方で異なる
障害年金は申請が必要な制度です。いざというときに備えるためにも、正しく知っておくことが大切です。
参考資料
日本年金機構「障害年金業務統計(令和5年度決定分)」
日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」
日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」
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