「Auracast(オーラキャスト)」と呼ばれる新たなBluetooth技術が、家庭や公共スペースでの音声コンテンツの聴取を大きく改善しようとしている。2022年に初めて発表されたAuracastに対応するデバイスは、ラスベガスで今週開催されたCES 2024でもいくつか公開された。このテクノロジーは、下記のような場面でメリットを発揮する。
・バーに集まった客たちが、自分のBluetooth対応イヤホンを使って、サッカーのテレビ中継の音声解説などを聞くことが出来る
・劇場などでは、客が自分のイヤホンを使ってセリフや演奏などを聴くことができ、特に補聴器を使用している人に便利なサービスになる
・空港や駅などの公共スペースでは、ゲートの変更などの特定の旅行者に関連する音声アナウンスを、この仕組みを通じて配信できる
・スマートフォンやノートパソコンの音声を、近くにいる友人や家族のイヤホンで共有できる
イヤホンやスマートフォンなどのBluetooth機器でこの新技術を使うには、Auracast対応のハードウエアが必要となる。だが、業界団体Bluetooth Special Interest Groupの広報担当者は、今後数カ月のうちにメーカーによるサポートが広まることを期待していると述べ、標準機能になる可能性が高いことを示唆した。
しかし、Auracastを利用するために、すべてのデバイスを交換する必要はない。例えば、テレビに約50ドルのトランスミッター・ドングルを取り付ければ、Auracast経由でオーディオをブロードキャストすることができる。ノートパソコンなどのPCも、Bluetoothマウスやキーボードに使われるような安価なプラグイン・ドングルを使ってブロードキャストを行える。
さまざまなメリット
Auracastの最大のメリットは、公共スペースで感じられるだろう。例えば、スポーツバーなどは、複数のテレビセットで異なるサッカーの試合を放映し、客は見たい試合の音声を選ぶことができる。
また、カンファレンスでは、複数の言語の同時通訳を提供できる。音声を受信できる人数に制限はなく、最大100m先まで音声を届けられる。CESで行われたデモンストレーションでは音声の遅延はごくわずかで、映像と音声がズレるという問題がないことが示された。
この技術は、聴覚に障害がある人にも大きなメリットを与える。例えば空港では、特定のフライトやゲートに合わせて放送アナウンスを提供することができる。つまり、乗客は自分のフライトの情報を、ターミナル内の騒音や他のアナウンスに邪魔されずに聞き取ることができる。
また、Auracastを通じたアナウンスは、旅行者が聴いている他の音声ソースに割り込むことも可能とされており、利用者が常に空港の音声フィードに接続している必要は無いという。
すでに複数のメーカーがAuracastに対応したトランスミッターやスピーカー、イヤホンなどを発表している。例えばJBLは、今回のCESでXtreme 4やClip 5、Go 4などの製品のAuracastサポートを発表した。
この技術の真価が問われるのは、アップルやサムスンといった主要なメーカーからのサポートが得られるかどうかだろう。しかし、携帯電話自体がAuracastに対応していなくても、対応しているヘッドフォンを接続すればブロードキャストを受信することができる。
(forbes.com 原文)
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