2025年6月30日(月) 19:54

連日厳しい暑さが続いているなか、プールに行くという人も多いのでは?プールに入ると「中耳炎」を発症するリスクが心配されますが、医師によると、その認識は“間違い”だといいます。その理由と顔面麻痺や骨を溶かすものもある「中耳炎」について聞きました。
プールで中耳炎になる…は間違い??

ヒトの耳は「外耳」「中耳」「内耳」の3つの区画に分かれています。このうち「中耳」とは鼓膜の裏側の空間を指し、「中耳炎」はこの空間で起こる病気。
発症すると、耳の痛みや耳垂れ、聞こえづらさなどの症状を伴います。
さて、「プールやお風呂で耳に水が入ると中耳炎になる」ということを聞いたことはありませんか?実は間違いだといいます。

富山市にある伊東耳鼻咽喉科クリニックの伊東宗治院長によりますと、中耳炎は鼓膜の内側に起こるもので、鼓膜に穴が開いている場合をのぞき、耳の穴から水が入ることでは中耳炎にはならないといいます。
ただ、鼓膜までの道「外耳」に炎症が起こる外耳炎になることはあるということです。
痛みに発熱、鼓膜に穴も…中耳炎の種類
中耳炎には「急性中耳炎」「慢性中耳炎」「滲出性(しんしゅつせい)中耳炎」「真珠腫性(しんじゅしゅせい)中耳炎」などさまざまな種類がありますが、最も多いのは急性中耳炎です。
伊東耳鼻咽喉科クリニック 伊東宗治院長
「鼻の奥が耳と『耳管』でつながっていまして、風邪の症状から耳管を通して中耳に炎症がいってしまう」

急性中耳炎の鼓膜の画像をみると、正常な鼓膜と比べ、赤く腫れあがっているのが分かります。
炎症によって鼓膜の内側に膿がたまり腫れることで痛みや耳だれ、聞こえにくさ、発熱などの症状が出ます。

伊東耳鼻咽喉科クリニック 伊東宗治院長
「ある程度症状があれば最初から抗生剤を内服していただいて、耳だれなどが出てくる場合は、合わせて液体の目薬みたいな『点耳薬』、そういったものを使っていただく」

しかし、急性中耳炎が完全に治らなかったり繰り返したりすると「慢性中耳炎」になる場合があります。
慢性中耳炎は鼓膜に穴が開いたままとなり、難聴や開いた穴から分泌物が出る耳だれを繰り返すなどの症状が出ます。
子どもの耳は菌が入りやすい

こうした中耳炎、特に乳幼児が発症しやすいとされています。
子育て中の母親
「1回なりました。夕方に急に『耳が痛い』って泣きだして。ずっと夜も『耳が痛い痛い』って」
「1回なると何回もなる感じで、耳鼻科に通っているとは(周りで)よく聞きます」
「市販の電動の鼻吸い機で、鼻水が出ていたらこまめに吸うようにしています」

中耳と鼻の奥を結ぶ耳管は子どもの場合、大人よりも短く、水平に近い角度で太いのが特徴。
そのため鼻水や喉の炎症が耳に届きやすく、細菌やウイルスが侵入しやすいのです。
また、子どもは免疫機能が未熟であることや、保育園などで風邪などの感染症にかかる機会が多いことも中耳炎を繰り返しやすい要因となります。
朝起きると片耳が聞こえなくなっていた…
嘉藤奈緒子アナウンサーは5月中旬、突然の耳の異変に襲われました。

2~3日ほど膿のような鼻水が出たあと、朝起きると右耳が聞こえなくなっていて、ひどい痛みが。
病院へ行くと「急性中耳炎」と診断され、抗生物質を1週間分もらい服用。治療中も音が二重に聞こえたり、自分の声が反響したり、急に聞こえなくなったりという症状に悩まされ仕事にも支障がでました。
喫煙やストレスも発症の要因に

中耳炎に注意すべきなのは子どもだけではありません。
2023年、全国の医療機関で中耳炎と診断された年齢別の患者数をみると、10歳未満が特に多く、10~60代は比較的少ないものの、70代から再び増加しています。
大人の場合、アレルギー性鼻炎など鼻の病気が原因になるほか喫煙やストレスなども中耳炎のリスクを高めます。
伊東耳鼻咽喉科クリニック 伊東宗治院長
「ストレスとか糖尿病とかは要するに、免疫を落とすというので感染症を起こしやすい」
長引けば鼓膜にチューブも…

長引く急性中耳炎や加齢によっておこるのが「滲出性(しんしゅつせい)中耳炎」です。
中耳に膿がたまる急性中耳炎とは違い、滲出液と呼ばれる炎症によって出てくる体液がたまることで発症します。

伊東耳鼻咽喉科クリニック 伊東宗治院長
「見ていても治らない場合は、鼓膜に切開をいれたりして中の溜まっている液体を吸い取る。鼓膜が閉じてまた液が溜まってくる場合は、チューブを入れて鼓膜に小さな穴を常に開けておくことで溜まりにくくする」
骨や組織を溶かして広がる中耳炎

滲出性中耳炎などが完治しないと顔面麻痺などの症状も起こる「真珠腫性(しんじゅしゅせい)中耳炎」に移行することも。
伊東耳鼻咽喉科クリニック 伊東宗治院長
「耳あかに近いような白い塊みたいなものが、鼓膜や内耳のほうに広がっていって、徐々に周りの骨を溶かして広がっていく。基本的には手術」
多くの耳鼻咽喉科医が恐れているのが中耳炎の炎症が「内耳」にまで広がる「内耳炎(ないじえん)」です。

「蝸牛(かぎゅう)」という音を感じるセンサーと「三半規管」という体のバランスをとるセンサーがうまく働かなくなり、めまいや難聴、耳鳴りなどの症状が現れます。
伊東耳鼻咽喉科クリニック 伊東宗治院長
「内耳のほうの神経にまで影響が及んでいて、聞こえの神経の細胞がダメージを受けていると、液体がなくなっても聞こえが悪いという状態が続く。それが割と長くなることが多い」
予防のための3つのポイント
中耳炎の予防として3つのポイントがあります。
①免疫を高める(バランスの良い食事&適度な運動)
②風邪を引いたら早めに受診&治療
③鼻水は強くかみすぎない・すすらない

見逃しがち、我慢しがちな耳の症状。深刻な状態になる前に耳の痛みや聞こえにくさなどの症状があれば早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。
リンク先はチューリップテレビスポーツ報知というサイトの記事になります。