「娘と一緒に音楽を楽しめた」ソニー技術が変える、フェスの当たり前

「娘と一緒に音楽を楽しめた」ソニー技術が変える、フェスの当たり前

MASHING UP編集部
Jul 25, 2025, 1:15 PM

4日間で総計3万3000人の親子らが参加した「こども音楽フェスティバル 2025」。

4日間で総計3万3000人の親子らが参加した「こども音楽フェスティバル 2025」。
撮影:Mashing Up


7月25日に開幕した「FUJI ROCK FESTIVAL ’25」を皮切りに、今年も音楽ファンにとって待ちに待った“夏フェス”シーズンが到来した。

文字通り、“音を楽しむ”音楽フェス。しかし、その「大きな音」が必ずしもすべての人にとって心地よいものとは限らない。身体障害や聴覚過敏などの理由で、音楽イベントの環境を楽しむことが難しい子どもたちもいるのが現状だ。

では、音楽の喜びをすべての人と分かち合うにはどうすればよいのだろうか? そのヒントが、2025年5月に開催された「こども音楽フェスティバル 2025」にあった。


世界最大級の音楽イベントで導入された、ソニーの最新テクノロジー

サントリーホール内でのオープニングコンサートの様子。複数の演奏者が舞台上に並んでいる。

2022年に初開催し、今回は2回目。
こども音楽フェスティバル 2025


「こども音楽フェスティバル 2025」は、サントリーホールとホール前のアーク・カラヤン広場(東京都港区)で開催された、子どもを対象とした世界最大級のクラシック音楽の祭典だ。

公式アンバサダーとしてピアニストの清塚信也さん、コンサート・プログラマーとして角野隼斗さんも出演するなど、国内外の第一線で活躍するアーティストたちが集まり、子どもたちに“本物の音楽”を届けた。

ピアニストの角野隼斗さんが、ステージ上でマイクを持って話している写真。

期間中、いくつかのプログラムに参加したピアニストの角野隼斗さん(写真右)。
こども音楽フェスティバル 2025


2025年は、「Music for All」を合言葉に、すべての子どもが音楽を楽しめるインクルーシブなフェスを目指して、ソニーや主催のソニー音楽財団、サントリーホール協力のもと、革新的なテクノロジーが導入された。

その一つが、次世代Bluetooth®の機能「Auracast™(オーラキャスト)」の活用だ。対応ヘッドホンを使い、聞こえにくさのある子どもたちにヘッドホン越しにリアルタイム(超低遅延)で音楽を楽しんでもらう試みで、日本のコンサートでは初めての実施となった。

特別に調整したソニーのヘッドホンやスマートフォンを組み合わせることで、聞こえにくさがあるこどもたちの聞こえを考慮して音を配信(※写真で装着しているワイヤレスヘッドホン『WH-1000XM5』の市販品は、現状Auracastには対応していない)。

特別に調整したソニーのヘッドホンやスマートフォンを組み合わせることで、聞こえにくさがあるこどもたちの聞こえを考慮して音を配信(※写真で装着しているワイヤレスヘッドホン『WH-1000XM5』の市販品は、現状Auracastには対応していない)。
協力:サントリーホール


「いつもより臨場感があった」

フェス当日、実際にAuracast™に対応したヘッドホンを装着して音楽を体感した子どもたちは、ヘッドホンを装着していない子どもたちと同様に音楽に聞き入り、また手拍子などで盛り上がる場面では一緒にリズムに乗る姿が見られた。

ヘッドホンをつけた小学生低学年の女の子の写真

音楽イベントに参加したのは2回目、という小学生の女の子。
撮影:Mashing Up


体験した子どもの保護者は、以下のように感想を語る。

”「聞こえる母としては、聞こえにくい娘と一緒に家族でコンサートを楽しめる可能性を感じてとても嬉しい試みでした。華やかで音圧のある金管楽器だけでなく、バイオリン1本の繊細な音も娘が楽しめていたことに驚きました」

「クリアな音でリアルタイムで楽しめた。自分の聞きたい音量に合わせて聞けた。学校にも欲しいと思った」”

また、体験した子どもたちからは、

”「ヘッドホンがあって、音楽や人の声がとても聞こえやすかった」

「いつもより臨場感があって、高い音や低い音まで拾ってくれてすごかった」”

という感想が寄せられた。


「観たい」「やってみたい」を叶えるテクノロジー


当日は、他にも誰もが楽しめるための取り組みや展示が行われた。

ロービジョン※の子どもへの「網膜投影カメラキット」と「RETISSA ON HAND」の提供もその一つ。

※何らかの原因により視覚に障害があり、メガネなどを装着しても「見えにくい」「まぶしい」「見える範囲が狭くて歩きにくい」など日常生活での不自由さをきたしている状態を指す。

これまで、聞こえてくる音や雰囲気を聴覚を中心に楽しんでいた子どもたちに、ステージ上の演奏者の動きや様子を見ながら鑑賞する機会を提供した。

説明パネル 撮影:Mashing Up

撮影:Mashing Up


さらに、ホール前の広場では、PlayStation®5用「Access™コントローラー」や、光や振動で音を感じることができる打楽器「ハグドラム」の体験コーナーもあり、行き交う親子の関心を集めていた。

ボタンの付替えなどができる、コントローラーの展示写真

多様なニーズに合わせてカスタマイズできる、PlayStation®5用のアクセシビリティコントローラー。
撮影:Mashing Up


カラフルな光を放つ楽器を叩く女の子の写真

音を光と振動で感じる打楽器「ハグドラム」。
撮影:Mashing Up


誰にとっても開かれた音楽を、どう実現するか?

「こども音楽フェスティバル」は、テクノロジーの力でバリアを取り除こうとすることで、すべての人が「音楽のある豊かな体験」ができることへの可能性を示したとも言えるだろう。

”「Auracast™をコンサートホールで活用したのは今回が初めてでしたが、手応えを感じている。海外では補聴器を使ったコンサートもあり、今後どういったところで活用していくかは検討を重ねていきたい」(ソニー 共創戦略推進部門 商品戦略部 奥田龍さん)”


この試みは、単なる“特別支援”ではない。すべての子どもたちが音楽にアクセスできるようにする“アクセシビリティの向上”に基づく試みであり、今後は教育現場や他のエンターテインメント分野への応用も期待したいところだ。

今年も多くの音楽フェスが全国各地で開催される。その中で、“誰にとっても開かれた音楽”をどう実現していくか。テクノロジーを活用した新たな試みが動き出している。

(取材・文:中島日和[Mashing Up])


リンク先はMASHING UPというサイトの記事になります。


 

Back to blog

Leave a comment