東京デフリンピックを大学チア強豪がPR、「しゅわしゅわ☆デフリンピック!」で手話を学ぼう

東京デフリンピックを大学チア強豪がPR、「しゅわしゅわ☆デフリンピック!」で手話を学ぼう

2025/07/05 17:16
#デフリンピック
反保真優


 「手話」でチアダンス? 全日本学生選手権を制した強豪チーム・帝京大学のチアリーディング部「BUFFALOS」が、「しゅわしゅわ☆デフリンピック!」を踊る動画が投稿されていた。部員らは、11月に開かれる東京デフリンピックをチアで盛り上げるために、独学で手話を学んだという。学生たちを訪ねてみた。(デジタル編集部 反保真優)


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帝京大学チアリーディング部の一糸乱れぬダンスは圧巻

帝京大学チアリーディング部の一糸乱れぬダンスは圧巻


 「こんにちは」「よろしくお願いします!」

 東京都八王子市のキャンパスにある体育館を訪れると、部員約80人が大きな声とはじける笑顔で出迎えてくれた。早速ダンスの練習を見せてもらう。競技チアを見るのははじめてだ。仲間を高々と投げたり体を軽々と上に持ち上げたり。チア競技の花形「スタンツ」のアクロバティックな動きと息ぴったりのダンスに思わず圧倒された。 

「ありがとう」の手話は大きな身振りと大きな声で

「ありがとう」の手話は大きな身振りと大きな声で


 学生たちが踊っているのは、「こどもたちが手話に触れるきっかけに」と東京都が制作したダンス「しゅわしゅわ☆デフリンピック!」。これを基にチアダンスの振り付けを考案して「デフリンピック」にエールを送っている。

帝京大学のチアリーディング部「BUFFALOS」


日常会話や応援の手話12個紹介

スタンツの上で「こんにちは」の手話を披露

スタンツの上で「こんにちは」の手話を披露


 「シュワ、シュワ、手話――」

 エールは、軽快な音楽とともに、両手の人差し指を向かい合わせて回転させる「手話」を表すポーズから始まる。仲間に支えられて部員が宙を舞った後、今度は仲間の上で立つスタンツ。時計の正午を表すように人差し指と中指を額に当てた後、両手の人差し指を曲げる表現をしながら、「こんにちは」と元気な声が鳴り響く。

 1分半の曲には、グーにした両手を2回下におす「がんばれ」や「拍手」、「ありがとう」など日常や応援で使える手話12個が盛り込まれており、楽しみながら学べるよう工夫されている。

デフリンピックのロゴマークマークで、手で作る真ん中の輪は目を表している

デフリンピックのロゴマークマークで、手で作る真ん中の輪は目を表している


 練習後、振り付けについて聞いてみた。この企画を通して、部員たちは初めて手話に接したという。同部3年の甘田凜さん(20)は、「手話には難しそうなイメージもあったけれど、東京都のHPやユーチューブを参考に見よう見まねで練習しました。意外とすぐに覚えられました」と振り返る。

 部のSNSでは、デフリンピックマークについて紹介したり、大会で採用されている21競技を表す手話を披露したりもしている。例えばバスケットボールの手話は、ドリブルの後にボールをリングに向かって投げる仕草にそっくり。言葉が表す動作と手話には親和性もあり、頭に入りやすかったという。


口を大きく表情豊かに


 振り付けを担当した3年の鳥羽寧々花さん(21)によると、考案に要した時間は「わずか1週間」というから驚きだ。

 その後の練習では、全員で一つずつの手話の意味と動きを確認した。踊りの最後には「しゅわしゅわダンス、一緒に踊ろう」とオリジナルのメッセージを考え、手話を単語ごとに自分たちで調べてつけて1か月足らずで完成させた。

 心にとめたのは、「聞こえる人、聞こえない人みんなに楽しんでもらえるように相手の気持ちになること」。部員同士で踊りを見せ合う中で、鳥羽さんは「表情をつけながら口を大きく開けてはっきりと発音したり、リズムをとりやすいようにサビで首を左右に振ったり、聴覚障害者にも伝わる工夫を大切にしました」と魅せ方へのこだわりを語る。 

両手をひらひらさせる「拍手」で笑顔を届ける

両手をひらひらさせる「拍手」で笑顔を届ける


 活動の幅は学校内外に広がっている。4月には、依頼を受けてデフリンピック出場を目指すデフハンドボールチームのエキシビジョンマッチのハーフタイムにダンスを披露。観客のろう者も健聴者も一緒に手話をしながら盛り上がり、会場の一体感を感じられたのがうれしかったという。大学では硬式野球部や吹奏楽部など7つの部活動の部員たちと一緒にダンスに挑戦するなど、「自分たちも楽しむ」をモットーに取り組んでいる。

 手話の授業を取り始めた部員も多いといい、甘田さんは「手話についてもっと知りたい、学んでみたいという気持ちが強くなった。ダンスをさらに広めて大会を盛り上げ、みんなで一緒に応援していきたい」と意気込んでいる。

帝京大学のチアリーディング部「BUFFALOS」


手話を学ぶハードルは高くない

 残念ながら、今のところ、デフリンピックはあまり知られていないようだ。昨秋の東京都の調査でも都民の認知度はまだ4割程度にとどまっている。デフスポーツを見る機会はこれまでなかなかなく、どこか縁遠いと感じているのかもしれない。

 でも、手話を学ぶハードルは、決して高くないと部員たちは教えてくれた。「手話 動画」で検索すると、たくさんのサイトが出てくる。

 せっかく日本で初めて、世界から選手が集まって開かれる国際大会。「手話」を少しでも覚えて、一緒にしゅわしゅわ盛り上がれば、きっと楽しいはずだ。私も今から手話を一つでも習得してみようと思っている。

 

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