2025.07.12

今週の「SPORTS BEAT」は、デフサッカー日本代表キャプテン、松元卓巳選手のインタビューをお届けしました。
松元卓巳選手は、1989年、福岡県のご出身。
生まれつき両耳が聴こえない先天性両混合性難聴を持ち、3歳から補聴器を着用し、口の形を読み取る口話を使いながら日常生活を送っています。
小学校3年生でサッカーと出会い、サッカー強豪校の鹿児島実業高校に一般受験で進学。
高校時代にデフサッカーと出会い、日本代表に選出され、現在はキャプテンとして、11月から東京で開催されるデフリンピックで優勝を目指していらっしゃいます。

──デフリンピックが、初めて自国・日本で開催される。それを聞いた時はどう思われましたか?
現役の間に自国開催があるなんて考えられなかったので、“嬉しい”を通り越して、何か表現できない気持ちですね。
──デフサッカーとサッカーとの違いというのは、どういう部分なんですか?
まずみなさんがご存知のサッカーとは、ルールとしては一緒です。グラウンドの大きさも、人数も11人ですし、試合の時間も全く同じです。
ただ1つ、工夫されたルールとして、私は両耳補聴器をつけていて、こういう静かな空間なら会話程度だったら聴こえるんですけれども、補聴器をつけても聴こえない選手もいますので、そこを公平にするために、試合中は補聴器を外さないといけないんです。そうすると審判の笛の音が聴こえないので、それをわかるようにするために旗を持って合図をするというところが一番大きく違うルールです。主審の方だけだと難しい部分もあるので、補助審判のような形でグラウンドの周りにいらっしゃって、その方たちも旗を持っていて、審判が旗を上げたら周りの人も旗を上げて合図をします。
──言ってみれば、その旗を持っていること以外は(普通のサッカーと)同じということになるんですよね。ただ、選手同士のコミュニケーションは、やっぱりどうしてもボールを見ていたり向いている方向がありますから、声を掛け合うということができないわけですよね。
そこが難しいのも大きな特徴の1つで、“アイコンタクトで目を合わせて表情を読み取る”というか、“そのプレーが切れた合間合間で手話を使って話す”というのが基本的なコミュニケーションになります。
なので、僕としては、普段からコミュニケーションの時間をできるだけたくさん作るようにしています。お互いが、たとえば“この選手はこんなプレーが得意だ”とか、“こういう風になるだろうな”とか、そういう信頼をしながらのコミュニケーションが大事になってくるのかなと思っています。
──先ほどデフリンピックで世界一を目指しているとご紹介しましたけれども、2023年の世界選手権ではみごと2位、銀メダルを獲得なさっています。この2023年の大会から、ユニフォームが日本代表と同じサムライブルーのユニフォームになったんですか?
そうなんです。それまでは全く違うユニフォームで、我々の協会で独自に揃えて試合をしていました。そこからいろんな方々の働きかけや動きがあって、この2023年のワールドカップで初めてA代表と同じヤタガラスのエンブレムが入ったユニフォームを着ることができたんです。僕自身、現役の間に着られると思っていなかったので、すごく感動しましたね。感動というか、もう言葉にできない感情でした。
──やっぱりモチベーションが上がりますよね。
上がりますね。専用のボストンバッグ1つ1つが大きいんですけど、それが10個とか届いて、トレーニングウェアから全部支給なんですね。僕らは今まで半袖だけだったんですけど、ちゃんと長袖も用意されいてますし、“すごいな”みたいな(笑)。
──それもあったんでしょうか、元々目指していたのがベスト4。それを超える、決勝まで進んでみごと銀メダルを獲得。
そしてこの大会のMVPが岡田拓也選手、そして優秀ゴールキーパー賞を松元選手がみごと受賞された。おめでとうございます。
世界選手権からおよそ2年。現在の日本代表チームはどうですか?
もう半年後にデフリンピックが控えていますので、大会に向けてのPR活動などもどんどん増えていて、そういった部分も踏まえて、選手たちもデフリンピックに向けて気持ちが高揚してきていますし、7月末に最終メンバー発表も予定されているので、それに向けて今、私自身もそうですけど、ちょっと身が引き締まる思いでいますね。

──このデフサッカーにも世界ランキングはあるんですか? 今、日本は何位ですか?
あります。日本は4位です。
──強豪国ということですね。
そうですね。日本が世界ランキングの1桁に載ったのも初めてなんです。今年の2月か3月に最新のランキングが発表されたんですけど、その時に4位だったので、本当にデフリンピックのメダルが初めて現実として見える位置にいるなと。
──ランキング通りにいけばメダルはほぼ獲得できるということだと思いますけれども、やっぱりトーナメントは何が起こるかわからないですもんね。
わからないですけど、僕の中では日本中のみんなと一緒に喜んで金メダルをもらっているイメージもできているので、僕の中ではもう金メダルを獲っているんです(笑)。あとはメダルを持ってくるだけなんです(笑)。
──イメージトレーニングは大事ですからね(笑)。
ちなみに、デフサッカーの強豪国はどのあたりになるんですか?
ダントツで1位はウクライナです。その下にフランスとかトルコ、今だとドイツとかセネガルが強いです。
──ウクライナがダントツの理由というのはあるんですか?
シンプルなんですけど、福祉の支援が発展しているんです。ウクライナはスポーツ関係なく一般の障害者に対する手当や支援もそうなんですが、デフサッカーの代表選手となって大会で結果を出すとすごいボーナスがもらえるみたいで。だからまずそれに対して選手も頑張りますし、そこから結果を出すとさらに入ってくるので、さらに頑張ると。かたやマイナーな位置づけになっている国は、日本とかもそうですけど、やっぱりそういう(福祉の支援)部分がまだ厳しい状況にはあります。
──福祉に対する支援というだけじゃなく、報酬として選手がお金をもらえるようになっていると。
ただ、ウクライナといえば、今国としては大変な状況ですからね。
そうなんです。2年前の選手権の時にもそういう状況の中だったので、(試合に)来られるのかなという不安もあったんですが、実際に来ることができて、彼らも強い思いで大会に挑んでいることが伝わってきたので、そういう相手と決勝で試合ができたことは本当に良かったと思っています。

──そして、「サインエール」という手話をベースにした簡単な身振りで選手への応援も広がってきているということで、松元選手、何か簡単なサインエールを教えていただいてもよろしいですか?
僕たちの手元にも(サインエールの説明が)あるんですけれども、「拍手の手話」というものが書いてあるんです。拍手って手を叩くわけですから、これは誰が見ても見えるものだと思ったんですけど、その拍手の手話がある?
はい。見えるんですけれども、「パチパチ」という音は直接聴こえないので、手を上に上げていただいて、手をひらひらさせる。
──幼稚園で「きらきらぼし」の時にやっているような振りを、ちょっと早くキラキラさせる。これが拍手。
そうすると、1人2人だと悲しい感じがあるかもしれないですけど(笑)、大勢になってくると眩しく煌めいているような感じで見えるので、“拍手してくれている”というのが伝わるんです。そういったところで視覚的な拍手になります。
──「行け」というサインエールは、この拍手の手話の後に肘を前に伸ばす?
「拍手」から肘を伸ばして「行け」となります。“このパワーを前に伝える”という意味で「行け」となるそうです。
──顔の横で両手で手をひらひらとさせてから、前に手を伸ばすと。これが「行け」。
はい。
──ぜひ、デフリンピックをみんなで観に行って、このサインエールをやりたいですよね。
さて、この番組は毎回ゲストの方にCheer up songを伺っています。松元卓巳選手の心の支えになっている曲を教えてください。
ゆずさんの「栄光の架橋」です。
アスリートの方はこの曲を選ぶ人が多いかなと思うんですけれども、今までのデフサッカー人生だったりと重なる部分があるので、試合前、移動のバスでこの曲を必ず聴いて降りるようにします。
──試合に入る時の、“スイッチを入れる曲”みたいなことでしょうか。
はい。僕は宿舎でも少し集中と緊張感を高めていますけど、どちらかというと少しリラックスした状態でバスに乗って、それからスイッチを入れるタイプなので。そこで気持ちも落ち着かせつつ、高揚させる。そのワードとしてもスッと入ってくるのが「栄光の架橋」なんです。
──ぜひ、東京デフリンピックでも、このゆずの「栄光の架橋」を聴いてスイッチを入れて、熱く戦っていただきたいなと思います。



今回お話を伺った松元卓巳選手のサイン入り色紙を、抽選で1名の方にプレゼントします。
ご希望の方は、番組公式X(旧ツイッター)をフォローして指定の投稿をリポストしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。
そして今回お送りしたインタビューのディレクターズカット版を、音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。
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「7月12日(土)OA分の放送はこちら」
リンク先はTOKYO FM / JFN『SPORTS BEAT supported by TOYOTA』というサイトの記事になります。