全国高校総体(インターハイ=読売新聞社共催)の陸上女子砲丸投げに、茨城県立水戸聾学校高等部3年の境橋 真優さん(18)が初めて出場する。幼少期に不登校も経験したが、砲丸投げとの出会いが前を向くきっかけとなった。29日に福岡市で行われる大会に向けて「障害のある後輩たちの希望になりたい」と意気込む。
(水戸支局 嶋村英里)

生まれつき耳が不自由な境橋さんは、補聴器と人工内耳をつけて生活する。部活動中は、手話やジェスチャーも交えて指導を受けている。6月の大会で11メートル97を記録し、北関東ブロックで24人中4位となり、高校総体の切符をつかんだ。顧問の西島経仁教諭は「助言の理解力と実践力が高く、素早く修正できるのが武器」と評価している。
聾学校の小学部に通っていた頃は「誰かに悪口を言われたらどうしよう」と教室に入るのが怖くなり、不登校になったことがある。母親に付き添ってもらい、授業に出られるようになったものの、内気な性格のままだった。
転機は砲丸投げを体験したことだった。中学部3年の時、校内の記録会で8メートルほどをマークすると、高等部の教諭に「競技として本格的に挑戦してみれば」と勧められた。
高等部では積極性が芽生え、バレーボール部でもレギュラーとして活躍し、陸上競技との「二刀流」で奮闘してきた。球技で磨かれた瞬発力に加えてベンチプレスで筋力をつけた。高校総体を前に、腕や腰を使って砲丸に力がしっかり伝わるようにフォームを固めた。
日本デフ陸上競技協会(横浜市)によると、高校総体の陸上競技に聾学校から挑むのは境橋さんただ一人。来年11月に日本で初めて開催される聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」の出場も目標で、高校総体を弾みにしたい。境橋さんは「砲丸投げを通して強くなれたし、努力は報われることを伝えたい」と力を込める。
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