19歳画家「描くことは『生命維持活動』」 聴覚過敏に不登校、自傷行為も

19歳画家「描くことは『生命維持活動』」 聴覚過敏に不登校、自傷行為も

2025/03/17

画家の小林嵩史さん=札幌市

画家の小林嵩史さん=札幌市


 緻密にペンで描かれたシマフクロウの体には、たくさんの人間の目や耳がある。声や音を視線のように感じる、聴覚過敏の自身を表現した。札幌市の画家小林嵩史さん(19)は不登校を経験し、時に自らを傷つけながらも16歳で初の個展を開き、2024年には作品をまとめた本を出版。「描くことで生きている。呼吸と変わらない『生命維持活動』」と語る。

 小学3年で不登校になった。教室にいると、耳が音の洪水であふれた。当時は聴覚過敏と分からず、帰宅後にパニックを起こした。転校先では問題児扱いされ、両親は離婚。高校は教師と折り合いがつかず1年で中退した。自傷行為や自殺未遂も繰り返した。

 日々の救いが、5歳から続ける絵だ。図鑑の模写に没頭し、やがて心の内を吐き出す場となった。絶滅危惧種のシマフクロウを自身と重ね、何度も描いた。ビル群や地下鉄のドアは、自分の心を狭める街の騒音の象徴。作品全体を、時に毒々しいほど鮮やかな色で塗った。「絵に描くことで浄化していた」

 内省的な作風は次第に変化しつつある。個展の来場者の声に応えたいと、最近はキツネや馬などさまざまな動物の描写に挑戦。生命の誕生と祈りをイメージした作品「導灯」は、約1メートル四方の水彩紙の中央でシマフクロウが大きく翼を広げる。

 2024年10月には画文集「死に損ないの獣たちへ」(かりん舎)を出版した。家庭や学校に振り回され「死に損なってきた」自分と同じ、命の瀬戸際に立つ人たちへ届いてほしいと願う。画文集と同じ題名の収録作品にはこんな言葉を添えた。「苦しくてつらくて言葉にならない感情を呑み込めなくたっていい」

 2025年3月13日からは、札幌市のビルの一室で、絵画約30点を飾る常設展を開いている。塗り絵コーナーを設置し、絵を描くイベントも思案中だ。自分のような人々の居場所をつくりたい。夢は膨らむ。

常設展に飾られた小林嵩史さんの作品=札幌市

常設展に飾られた小林嵩史さんの作品=札幌市


小林嵩史さんの作品「導灯」(本人提供)

小林嵩史さんの作品「導灯」(本人提供)


出版した画文集「死に損ないの獣たちへ」を持つ画家の小林嵩史さん。後方は作品「導灯」=札幌市

出版した画文集「死に損ないの獣たちへ」を持つ画家の小林嵩史さん。後方は作品「導灯」=札幌市


作品を手に取る画家の小林嵩史さん=札幌市

作品を手に取る画家の小林嵩史さん=札幌市


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