要約 研究者らは、スクリーン使用時間と自閉症スペクトラム障害(ASD)およびADHDの遺伝的素因との関連を調べた。
650万以上の遺伝子多型を分析した結果、遺伝的にASD傾向のある子どもはスクリーンの使用時間が長いことがわかった。
一方、ADHD傾向のある子どもたちは、年齢を重ねるにつれてスクリーン使用時間が増加した。
この研究結果は、スクリーン利用がASDの原因であるという考えを覆すものであり、むしろスクリーン利用がASDの早期指標になることを示唆している。
主な事実
- この研究では、ASDやADHDに対する遺伝的感受性を評価するために、子どものDNAにある650万もの多型を基にした「多遺伝子リスクスコア」が用いられた。
- ASDの遺伝的リスクが高い子どもは、幼少期から1日4時間以上スクリーンを使用する可能性が最大で2.1倍高かった。
- このような子どもは、人間関係よりも物事に魅力を感じることが多いからである。
出典 名古屋大学
名古屋大学大学院医学系研究科を中心とする研究チームは、自閉症(ASD)児とADHD児のスクリーンタイムを調査した。
スクリーンタイムとは、スマートフォン、パソコン、テレビ、ゲーム機など、画面のある機器を使用する時間のことである。
研究者らは、ASDの遺伝的素因を持つ子どもほど、スクリーンを長時間使用する傾向があることを発見した。
一方、ADHDの子どもたちは、最初のスクリーン使用時間が短くても、成長するにつれてスクリーン使用時間が徐々に長くなっていった。
この研究結果は、精神医学専門誌『Psychiatry Research』に掲載された。
デジタル機器の画面を見て過ごす人が増えている。特に、神経発達障害のある子どもたちは、画面を長時間使用する傾向がある。
この問題を認識して、名古屋大学と浜松大学の研究者らは、ASDとADHDの遺伝的感受性を調べるために、437人の子どものDNA中の650万個の多型を調べた。
次に、ASD/ADHDに関連する遺伝子の変化の影響の数と大きさを考慮した遺伝的リスク指数を算出した。これは「多遺伝子リスクスコア」として知られている。
次に研究者たちは、18カ月、32カ月、40カ月の子どものサンプルで、スクリーン機器を使用する時間と比較した。
その結果、遺伝的にASDになりやすい子どもほど、幼児期からスクリーン付き機器を長時間(1日3時間または4時間以上)使用していることがわかった。
また、ADHDの遺伝的リスクが高い子供は、成長するにつれてスクリーン使用時間が徐々に長くなることもわかった。
主任研究者である名古屋大学の高橋長英博士は、次のように説明している。
全体として、ASDの遺伝的リスクを持つ子どもたちは、1日のスクリーンタイムが3時間程度のグループに1.5倍、4時間以上のグループに2.1倍多かった。
幼少期の長時間のスクリーンタイムがASD/ADHDの原因であることが示唆されているが、今回の研究結果は、ASDのために遺伝的にスクリーンを使用する体質を持っている人がいる可能性を示唆している。
「ASDの子どもは、人よりも物に惹かれることが多いので、スクリーンタイムはASDの原因ではなく、初期症状かもしれません。医師は、長時間のスクリーン利用がASD発症の危険因子であると結論づけるのは公平ではないことを知っておくべきです」。
高橋氏はまた、ADHDの子どもたちを機器のスクリーンに過度にさらすことに注意を促している。
「私たちの結果は、ADHDのリスクがある子どもは、特にゲーム中毒が多いことから、スクリーン時間が長すぎるリスクがあることを示唆しています。特にADHDになりやすい子どもはスクリーンタイムが長くなる傾向があるため、親や養育者はスクリーンタイムに慎重になり、問題になる前に約束する必要があります。」
これらの結果は、親がより良い育児戦略を考案するのにも役立つかもしれない。
「神経発達障害の子どもを持つ親は、子どもにスクリーンタイムを与えることに罪悪感を感じたり、周囲から批判されたりするかもしれません。」
「しかし、別の行動管理戦略を提供することを含め、養育者に援助を提供することをお勧めします」。
リンク先はアメリカのNeuroscience Newsというサイトの記事になります。(英文)