オメガ3脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)の血中濃度が、聴力障害と逆相関していることが、新たな集団ベースの横断研究で報告された。
DHAレベルの高い中高年は、DHAレベルの低い中高年に比べ、加齢に伴う聴覚障害を訴える可能性が8~20%低かった。
「DHA濃度が高いほど、心臓病、認知障害、死亡のリスクが低いことは以前にも報告されている。今回の研究は、これらの知見をさらに発展させ、聴覚機能を維持し、加齢性難聴のリスクを軽減する上でDHAが果たす役割を示唆するものです」と、脂肪酸研究所の上級科学者で、ゲルフ大学人間健康・栄養科学科およびタフツ大学フリードマン栄養科学・政策学部の非常勤教授であるマイケル・I・マクバーニー博士は語る。
米国栄養学会とカナダ栄養学会のフェローであるマクバーニーは、7月22日から25日までボストンで開催される米国栄養学会の主要年次総会であるNUTRITION 2023で研究結果を発表する。
英国バイオバンクのデータを用いて、研究者らは英国の40〜69歳の10万人以上の自己申告による聴力状態と血中DHA濃度を分析した。
潜在的な交絡変数を考慮した結果、血中DHA濃度が最も高い五分位群(参加者の5分の1)の人は、最も低い五分位群の人に比べて、「聞こえにくいですか」という質問に「はい」と答える確率が16%低かった。
同様に、DHA値の五分位が最も高い人は、DHA値の五分位が最も低い人に比べて、「周囲の雑音があるときに会話についていけないことがあるか」という質問に対して「はい」と答える確率が11%低かった。
この結果は、DHAレベルと聴力との間に有意な関連があることを示しているが、McBurney氏は、横断的な母集団研究は、DHAが聴覚機能を維持するとか、不十分なDHAレベルが難聴の一因であると明確に結論付けるには十分な証拠にはならないと注意を促した。
しかし、今回の研究結果は、オメガ3脂肪酸、特にDHAが健康を維持し、加齢に伴う様々な身体機能の低下を防ぐのに重要であることを示す証拠になる。
オメガ3系脂肪酸は、内耳の細胞の健康を守ったり、大きな音や化学物質、感染症に対する炎症反応を和らげたりするのに役立つかもしれない。
高齢者や動物を対象に行われたこれまでの研究でも、オメガ3系の摂取量が多いほど、加齢に伴う難聴と逆相関になり、難聴を予防できる可能性が示唆されている。
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