2025 / 08 / 15
ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン

2025年7月4日に、ANA Blue Base内カフェテリアで第20回「心のバリアフリーセミナー」を開催しました。ANAグループは、共生社会の実現を目指し、2015年から本セミナーを開催しています。
今回は「共感で紡ぐ人とのつながり」~誰もが居心地よく過ごせるために~をテーマに、スターバックス コーヒー ジャパン株式会社から3名の講師が招かれました。講師は、スターバックス 渋谷cocoti店で手話を用いて接客を行うろう者の佐藤八寿子さん、そのご息女で同じくろう者の佐藤優瞳さん、そして元スターバックス コーヒー ジャパンサイニングストアのストアマネージャーで聴者の田中冴子さんです。
※サイニングストアとは、東京・国立市にある「スターバックス コーヒーnonowa国立店」のことで、聴者と聴覚に障がいのあるパートナー(従業員)が共に働き、主なコミュニケーション手段は手話を使用し運営しています。スターバックスのダイバーシティ&インクルージョンを象徴する店舗の一つです。
今年11月には東京デフリンピック2025が開催され、世界各国から聴覚障がいの選手や関係者、観戦されるお客様を空の玄関口である機内や空港でお迎えします。対応するANAグループ社員が聴覚障がいのお客様に寄り添い、快適な空の旅を提供できるよう、今回は実際に手話を用いて接客をされている講師の皆様をお招きしセミナーを開催しました。
セミナーでは、スターバックスというブランドについてや「ろう文化」、そして講師の皆さまの経験談を交えながら、サービスを受ける側・提供する側、それぞれの視点からコミュニケーションのポイントなどをお話しいただきました。
スターバックス コーヒー ジャパンのNo Filiterの考え
「コーヒーをいれるのには“フィルター”が必要だけれど、人の心には“フィルター”はいらない」
スターバックス コーヒー ジャパンでは、多様なパートナー(従業員)が自分らしく輝く居場所を目指し「NO FILTER」という共通の価値観を持ち働いています。
今回登壇していただいた講師の3名はそれぞれがスターバックスの「NO FILTER」を体現し、一緒に働く仲間や地域のお客様にも、このメッセージを届けるロールモデルとして活躍されています。
当日の参加者からも「NO FILTER」の考えに共感したという声が多く寄せられました。
「ろう文化」
「ろう文化」とは、手話を共通言語として、視覚的情報伝達を重視する生活文化を指します。
日本で初めて「ろう文化宣言」がなされてから30年以上が経ちました。
講師の一人、八寿子さん自身も「ろう文化宣言」を知ることにより、「ろう者としての自己」に大きな影響を受けたそうです。
就職のために上京し社員寮に入り、聴者との共同生活を通して聴社会・聴文化というものを知り、さらに日本手話の指導を通してろう文化と聴文化の違いを認識し、様々な発見がありましたと振り返る八寿子さん。

デフファミリーの日常
日本手話を母語とし、音をまったく意識することのない家庭で育った佐藤さん親子。
家族全員が聞こえないと話すと、聴者からは「大変ね」「よく頑張っているね」
などと同情されることが多いそうですが、私にとっては当然の事ですので、
まったく意識していません、と笑顔で仰っているのが印象的でした。
「八寿子さんの母語は、日本手話。ろう者は手話を使って会話し、視覚を使って情報を取り、コミュニケーションをとっています。」音のない世界で育ってきた八寿子さんにとって、手話を使って会話をすることは当たり前のこと。
今年6月、国会で「手話施策推進法」が施行され「やっと国が、手話が言語であると認めてくれた。うれしく思っています」と笑顔。「ろう者であることを時に不便と感じることはあるが、不幸ではない」との八寿子さんの話は参加者の考え方に大きな認識の変化を与えました。

講演の様子
大事にされているコミュニケーションのポイント
セミナーでは、講師それぞれがコミュニケーションで大切にしていることを語りました。
佐藤八寿子さん: 相手の目を見てアイコンタクトをとること。また、聞こえないことがわかった際に、身振りなどを交えて配慮してもらえると嬉しい。
佐藤優瞳さん: ろう者を「かわいそう」と決めつけず、自然にコミュニケーションをとってくれると嬉しい。
田中冴子さん: 相手が本当に望んでいることか、自分の決めつけではないか、過度な対応ではないかを考え、相手の表情や行動などを観察して、その人に合ったサービスを考えるようにしている。
「手話は目で見る言語」であり、手話が使えなくても筆談や身振りなど、柔軟なコミュニケーションを通じて互いに安心して話せるようになると述べました。
セミナーの終わりには、参加者全員が両手を上げて手首を回す拍手の手話で、講師に感謝の気持ちを伝えました。当日は、ZOOMと対面で参加した方々から、手話での質疑応答も行われました。

会場参加者の様子
参加者の声
「ろう者の方は特別な配慮が必要な方ではなく、異なる言語を使用される方という考え方が非常に印象的でした。耳が聞こえないということは、聴覚『障がい』と思いがちですが、違う言語と聞いて、確かにその通りだと思いました。
知らない外国語と同様、様々な手法でコミュニケーションは取れると思いました。」
「デジタルの普及で相手がどう思っているかを察する力が衰えてきている。筆談や身振りでも相手に伝えようとする気持ちが大切ということを再認識しました。」
「『不自由は自分が決める事であって、他人が決める事ではない』という言葉が印象に残りました。この考え方でもっとコミュニケーションを楽しめると感じます。」
セミナー参加者の声からはろう者に対する考え方、コミュニケーションを取る際に聴者が意識できる点、また今後自身では何ができるかという点に関して前向きな声が多数寄せられました。
ANAグループでは、これからもすべての人々に「ワクワクで満たされる世界を」目指し、ユニバーサルな取り組みを通じて、誰もがともに歩める共生社会の実現に貢献していきます。

会場参加者との記念撮影
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