「改訂版・耳」のトリセツ

「改訂版・耳」のトリセツ

あしたが変わるトリセツショー

あしたが変わるトリセツショーのバナー

公開:2025年7月10日(木)午後7:28
更新:2025年7月10日(木)午後7:28
NHK


「改訂版・耳のトリセツ(取扱説明書)PDF」のダウンロードはこちら👇
https://www.nhk.or.jp/program/torisetsu-show/2025_kaiteimimi_dkak.pdf


【トリセツ01 聞こえないわけではないが「聞こえづらい」軽度難聴とは】


👂「聞こえない」わけではないけど「聞こえづらい」?

自分は聞こえている。だから難聴ではない。そういう思い込みにより、難聴を放置してしまう人が多いことを、専門家たちが危惧しています。トリセツが「聴力に自信がある」という40~60代の男女20人を集めて実験を行ったところ、なんと6人が難聴という結果に。

その6人に共通していたのは、日常生活では困ったことがないけれど、「雑音の中で聞こえづらくなる」ことでした。このように日常生活には支障がなくても、居酒屋や雑踏など雑音の中で聞き取りが低下するのが「軽度難聴」の特徴です。

👂困らないと思いきや!難聴放置で記憶力低下に認知症/うつのリスク上昇

日常生活で困らないから大丈夫、と思ったら…。「聞こえづらい」だけにとどまらない影響があることがわかってきました。専門家が特に懸念しているのが、認知症リスクの上昇。難聴を放置するとそのリスクが2倍以上に。症状が進行するにつれて、さらにリスクが高まるというのです。聞こえづらさをきっかけに、人と会話する機会が減り、頭の活性化が鈍ることが原因の1つだと考えられており、聞こえる音が減ることで脳が萎縮するという研究も存在します。さらには会話に困難が生まれることで外出の機会が減り、うつ病リスクの上昇や筋力の低下、聞くことに必要以上に集中力を使うために、記憶力や、疲れやすさに影響するとも考えられています。

難聴キーワード


【トリセツ02 聴力を守るカギは有毛細胞にあり!】

👂脳に音が来たことを伝える耳の中の「有毛細胞」

聴力を守るカギは耳の中、渦巻き型の器官「蝸牛(かぎゅう)」にある「有毛細胞」。片耳に1万2,000個ある「毛の生えたユニークな細胞」で、
蝸牛の中にある天井付きの小さな部屋に規則正しく並んでいます。

ピンクの全身タイツを着た男の子三人

耳に音が入ると、それによって震えた鼓膜の振動をもとに、毛の生えた部分を天井に打ちつけて、脳に音が来たことを伝えるのです。

音が聞こえる仕組み

👂大きな音に長時間さらされることで有毛細胞が死ぬ

大きな音が入ると…有毛細胞は激しく天井に頭を打ちつけます。

これが長時間続くと、有毛細胞が死んでしまうのです。有毛細胞が死ぬ数が増えれば増えるほど、難聴の度合いは進行していきます。そして有毛細胞が死んでしまうのには、加齢や生活習慣などさまざまな要因があります。

たとえば、喫煙や乱れた食生活は血の巡りを悪くすることで、有毛細胞に十分な栄養を与えられない状態を作り難聴になりやすいと考えられています。遺伝的な要因もあり、人によってはもともと有毛細胞の数が少なかったり、細胞がもろかったりという事もあります。

しかし、さまざまな原因の中でも大きな位置を占めるのが大音量の騒音を長時間聞くこと。さらに、年を取るごとに、有毛細胞のダメージが蓄積し、より死にやすくなると考えられています。音とのつきあい方を見直すことが、聴力を元気に保つひけつなのです。

👂トリセツ特製 音と時間のチェック表で有毛細胞を守り抜く!

私たちの周りには大きな音があふれているため、避け続けるのは至難の業。そこで、私たちの身の回りの音の大きさと、その音量をどれくらい聞くとリスクになるのかまとめた表を作りました。WHOが推奨する「音が耳に与える負担を計算できる数式」をもとにまとめたトリセツ特製 「音と時間のチェック表」です。音の大きさが大きければ大きいほど、耳への負担が大きいため、リスクを減らすためには聞く時間を短くする必要があります。たとえば、音楽イベントは95デシベルで、リスクとならないのは10分40秒まででした。

また、イヤホンやヘッドホンを使用する場合は、地下鉄など、周囲の音が大きな環境においては80デシベル近くの音量になることも発覚。実はいま、専門家もイヤホン・ヘッドホンによる難聴(イヤホン・ヘッドホン難聴)が増えていると、警鐘を鳴らしています。ぜひ、音と時間のチェック表をもとに音とのつきあい方を振り返ってみてください。

音と時間のチェック表


【トリセツ03 すでに聞こえづらい方には補聴器を!】

👂自分に合う補聴器で本来の力を発揮!

補聴器は買ってただつけるだけでは、本来の力を発揮できません。必要なのは医師や専門店にいる認定補聴器技能者の力を借りて、自分用にカスタマイズされた補聴器を手に入れること。補聴器は入ってきた音をすべて大きくするのではなく、使用者の聞こえ方の特性に合わせて、必要な高さの音を必要なだけ大きくする「カスタマイズが必要な機器」なのです。

難聴のオージオグラム

補聴器のつけ始めは、いままで聞こえていなかった音が聞こえるようになるため、脳が驚き、うるさく感じてしまうことがあります。専門店に通い、調整を繰り返すことで聞き取りがよくなっていきます。期間の目安は3か月。

👂 敬遠されがちな補聴器 しかし想像以上の効果が!

日本では難聴がある人の中でも15%ほどの人しか使用していないといわれる補聴器。しかし、いま補聴器に想像以上の効果があるのでは?と医師や研究者の間でも注目されています。

それは、認知症リスクや、うつのリスクなど、 難聴によって上昇するリスクを軽減してくれるのではないかということ。ある論文では、難聴による認知症のリスクは2割減、うつのリスクは1割減すると報告されています。さらに、   補聴器で「楽に聞こえる」ことで、聞くこと
以外に力を割くことができるようになり、難聴による記憶力の低下や、疲れやすさの軽減にも   つながるのではないかと、考えられています。

補聴器で記憶が上昇した男性


【トリセツ04 聞こえてはいるけど「聞き取りづらい」聞き取り困難症(LiD/APD)という症状も】

👂聴力検査で問題がなくても「聞き取りづらい」

軽度難聴のように小さな音が聞きづらい「耳に原因がある難聴」ではないにも関わらず、雑踏の中や、大人数での会話で聞き取りが難しくなる「聞き取り困難症(LiD)」という症状が存在します。「聴覚情報処理障害(APD)」とも呼ばれる症状で、音を聞く力に問題がないものの、音の情報を脳で処理し、言葉として理解することに困難が生じるという特徴があります。同じ症状であっても背景はさまざまで、心理的要因が影響することもあります。

聞き取り困難症(LiD)のバナー


日本において、まだあまり認知されていない症状のため、診断できる医療機関は限られていますが、全国に20ほどあります(2023年3月時点)。一覧はリンクからご覧ください

https://apd.amed365.jp/party/party02.shtml (※NHKサイトを離れます)※別タブで開きます

なお、2024年から「診断の手引き」が研究グループから発表され、診断のできる医療機関が全国的に増加していく見込みです。

👉対策:「聞き取りづらい」と思ったら?

現在、聞き取り困難症に治療法はありませんが、当事者の集まる当事者会などでそれぞれの経験をもとに、対策が共有されています。方法は主に「周囲の雑音を減らす」ことと、「聞き取りたい音を選択する」ことで、以下のようなものがあります。

聞き取り困難症対策

詳しくは下記のAPD当事者会HPをご覧ください。

https://apd-peer.jimdofree.com/ (※NHKサイトを離れます)※別タブで開きます

また、岡山大学 片岡祐子医師監修のAPD支援リーフレットはこちらから。

https://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/ja/search/p/33/item/63051?sort=updated_at%3Ar%EF%BC%89 (※NHKサイトを離れます)※別タブで開きます


【トリセツ05 対策編!音と上手につきあうには?】


👂 適した音量と休息で有毛細胞をいたわろう!

聴力を守るのに大切な有毛細胞を死なせないために大切なのは、大きな音を長時間聞かないことと、耳を休めること。WHOは、下図のように音の大きさと聞いても問題のない時間の目安を定めています。80デシベルはだいたい掃除機をかける音くらいで、それより下はリスクが低いといわれています。

近年、専門家が懸念しているのはイヤホンやヘッドホンによる「イヤホン・ヘッドホン難聴」。特に周囲がうるさい場所だと知らず知らずに大きな音で長時間聞いている人が多いのだといいます。対策は、60・60メソッド。

音量は機器の最大音量の60%以下に設定し、1時間聞いたら10分休むこと。また、ノイズキャンセリング機能を活用することで、周囲の騒音を抑え、イヤホン・ヘッドホンの音量を下げることができます。

一日あたりの騒音暴露量の目安

👂 既に聞こえづらい方へ

補聴器の選び方

既に聞こえづらい場合は補聴器が選択肢の一つとなりますが、選び方がとても大切です。


補聴器相談医に補聴器をつけるべきか相談

軽度難聴でも補聴器をつけたほうがよい場合も。ライフスタイルや困りごとを打ち明けて判断してもらうと良い。 


認定補聴器技能者のいる店を紹介してもらう

補聴器の調整には熟練の技が必要。補聴器のプロである認定補聴器技能者に調整をしてもらうと良い。購入前に試聴を行うのがベスト。


補聴器は専門店で定期的に調整

補聴器をつけると聞こえていなかった音が聞こえるようになるため、脳が驚き、うるさく感じがち。そのため、認定補聴器技能者は脳を慣らすために最初は補聴器の音量を小さくするなど、工夫をしています。定期的に通うことで、脳を慣らし、補聴器を自分の耳にカスタマイズするのが最適な補聴器を手に入れるコツ。目安は3か月程度です。

また、急に聞こえが悪くなった場合など、治療が可能な難聴もあります。ただし、できるだけ早く治療を開始することが大切。耳の異変に気づいたらすぐに耳鼻咽喉科へ。

補聴器相談医の情報は耳鼻咽喉科のHPから

https://www.jibika.or.jp/modules/certification/index.php?content_id=39 (※NHKサイトを離れます)※別タブで開きます


改訂版だけの追加情報! 突発性難聴について


👂突発性難聴とは、どんな病気?

  日本で年間およそ7万人が発症するといわれる突発性難聴。働き盛りの40~60代に多く見られます。実はいまだに原因が不明で、未解明なことが多い難治性疾患です。症状は、特に原因や前兆がなくある日突然聞こえが悪くなります。多くは片耳で起こりますが、まれに両耳同時に起きる人もいます。聞こえが悪くなるほかに、人によっては響いて聞こえたり、こもったり、つまったりする感覚、耳鳴りやめまいが合わせて起こることも。

突発性難聴年齢別患者数

👂発症のメカニズム

原因は不明ですが、鼓膜の奥の内耳という器官で何らかの障害が起きていることは知られています。例えば、ウイルスの感染、血流障害などが考えられ、それらによって、内耳の有毛細胞などの機能が障害されている可能性があるといいます。

見もの解剖図

👂注意!なりやすい生活習慣

ストレス、疲労、睡眠不足、飲酒・喫煙、などがあると発症しやすいといわれます。  

👂もし自分がなったら…対策は?とにかく早く治療を受けることです。診断によっては、突発性難聴ではなく、症状が似た別の病気である可能性があります。その中には治る可能性が高いものもあります。それを判断してもらうためにも早さが重要です。発症から2週間以内の治療開始で、患者さんは3分の1ずつ、完治、何らかの回復、回復しない、にわかれるといいます。  

突発性難聴発症から2週間以内の治療開始で、患者さんは3分の1ずつ、完治、何らかの回復、回復しない、にわかれるといいます。

👂聞こえに何か違和感を感じたら、速やかに耳鼻咽喉科を受診しましょう!

情報満載!トリセツショーInstagram

https://www.instagram.com/accounts/login/?next=https%3A%2F%2Fwww.instagram.com%2Fnhk_torisetsushow%2F&is_from_rle (※NHKサイトを離れます)※別タブで開きます


関連リンク


「改訂版・耳」のトリセツ番組概要はこちら


リンク先はNHKというサイトの記事になります。

Back to blog

Leave a comment