障害がある人もない人も「一緒に一つの映画で感動する空間を」…「ユニバーサル映画」特化した上映会

障害がある人もない人も「一緒に一つの映画で感動する空間を」…「ユニバーサル映画」特化した上映会

2025/08/12 09:40

 障害がある人もない人も楽しめる「ユニバーサル映画」に特化して上映会を開いている福岡市のNPO法人「みらいシネマ福岡」。こうした取り組みを行うNPOは全国的にも珍しいとされ、昨年10月の設立以降、2回上映会を開いた。代表理事の西嶋貴美子さん(68)に活動への思いを聞いた。(鶴田明子)

西嶋さん

西嶋さん


 ――ユニバーサル映画とはどういうものか。

 「最近の映画はバリアフリーに対応しているものが多い。聴覚障害者向けにセリフ以外にも字幕を入れたり、視覚障害者向けには、例えば『そっと柱の陰で見守る妹』などと情景を説明するガイドを機器で聞けるようにしたり。そうした映画を、障害者だけでなく健常者も一緒に見ようという取り組み」


 ――上映会を始めた経緯は。

 「勤務先の福岡市立点字図書館で、視覚障害者向けの『聴く映画』の存在を知り、音声だけで映画を楽しむ方法があるんだと関心を持った。利用していた視覚障害のある男性が『映画は見て完結でなく、語って完結する。感想を語り合うのが楽しい』と話していた。それがいろんな人とできればいいなと思った」

6月の上映会の様子(みらいシネマ福岡提供)

6月の上映会の様子(みらいシネマ福岡提供)


 「この考えから、上映会には監督やプロデューサー、俳優などを招き、制作への思いなどを聞くトークショーを開いている。手話通訳に加え、音声認識の機器を使ってリアルタイムで話す内容を映し出す。高齢で聞こえにくくなった人や、手話を第一言語とする人にも対応したいという思いだ」


 ――これまでの上映会で印象的だったのは。

 「6月に京都アニメーション(京都府宇治市)の作品『 聲こえ の形』を上映した。聴覚障害の子が出てくるアニメで、声優の入野 自由みゆ さんが登壇し、『僕の母も手話通訳をやっていた』などと語ってくれた。人気の声優さんでファンの方の応募が殺到し、驚いた」

 「当日、コスプレのような格好をしたお嬢さんが、 白杖 はくじょう をついた視覚障害の人に肩を貸して、受付まで一緒に上がってきてくれた。全く奇をてらった感じがなく感激した。手話通訳の光景を目にした健常者も、『この会場にも聞こえない人がいるんだ』と自然と感じてくれたと思う。やっぱりやってよかったと思った」

 「8月16日にも、戦時中の集団疎開を描いた『あの日のオルガン』の上映を予定している。主演の大原櫻子さんと平松恵美子監督のトークショーを計画し、観客も募っている」


 ――今後の展望について。

 「認知度の向上が課題と感じている。初めての場所に出かけるのに不安があると言われる視覚障害者ら参加した人たちからの口コミで広がっていくとうれしい。私たちの法人のポスターには、赤ちゃんや盲導犬を連れた人、白杖を持つ人、ヘルプマークをつけている人などを描いている。映画館でふと周りを見たら、そういう人が隣にいる。一緒に一つの映画で感動する。その光景が普通であればいいなと思う。みらいシネマが、社会の縮図のような空間になることを願っている」


◆にしじま・きみこ =福岡市出身。福岡県内の短大を卒業後に地元民放局に入社し、結婚を機に退職。専業主婦をしていたが、子育てが一段落ついた20年前から福岡市立点字図書館に臨時職員として勤める。NPO法人「みらいシネマ福岡」(092・407・1366)は館の同僚らと発足させた。上映会は同市中央区の市科学館で行い、入場料は大人1000円。法人では活動に充てる寄付金を受け付けている。


リンク先は讀賣新聞オンラインというサイトの記事になります。


 

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