まったく外に出られなくなって…緑川ちひろさん突発性難聴との闘い

まったく外に出られなくなって…緑川ちひろさん突発性難聴との闘い

公開日:2024/07/29 06:00 更新日:2024/07/29 06:00

緑川ちひろさん(タレント/31歳)=突発性難聴

緑川ちひろさんの写真
緑川ちひろさん(C)日刊ゲンダイ

「この病気は完治する人が少ない。やれることはやりますが、治るという保証はできません」

 そう聞いたときはショックでした。ひと言で言えば「絶望」……。何もかも嫌になってしまうほど落ち込んで、悩んで、とても受け入れられない状況が長く続きました。

 異変は2022年の春、ある朝目覚めたら右耳だけ、まるでプールの中に入ったようにくぐもっていたのです。初めは飛行機の離着陸の時や新幹線でトンネルを通過する時に耳が詰まるような一時的なものだろうと思っていたのですが、何時間経っても治る気配がありません。でも仕事もあったので、すぐに病院には行かず、ぼわっとした状態のまま4日間過ごして、5日目の日曜日にやっと病院を受診しました。

 ネットで見つけた日曜受診可能の病院に行って、聴力検査などした結果、そこでは「突発性難聴」とは診断されず「薬で治ることもある」と言われて、1週間分の薬を処方されたのです。

 でも、だんだんひどくなってきて耳鳴りが出始めました。そこで、薬を飲み切る前に、耳鼻科に強い別の病院を受診しました。再び検査をすると、すぐに「突発性難聴」と診断されて、即ステロイドの点滴を打たれました。

 この病気は、症状が出始めてから1週間以内にステロイドでガツンと炎症を抑えることが唯一の根本治療だそうです。私の場合、少し遅かったのかステロイドを打っても良くなりませんでした。逆にめまいが出始めて悪くなるばかり……。こうなると、もうステロイドを打っても意味がないので、点滴はその一度きりで終了し、あとは耳鳴りには耳鳴りの薬、めまいにはめまいの薬という対症療法だけ。要は「この状態に慣れていくしかない」と告げられました。

 左右で聞こえ方の違うつらさ、24時間鳴りやまない耳鳴りとめまい……。これが完全には治らないとわかってからは、まったく外に出られなくなりました。めまいは回転性で家の中でも転んでしまうほど。仕事ももちろんできませんし、テレビやスマホの画面を見るだけで気持ちが悪くなってしまうので、丸1カ月、ほぼ寝たきり状態でした。友達からメールをもらっても、返信などとてもできなかった。ずいぶんみんなに心配をかけました。

 でもグルグル回転していためまいが立ちくらみぐらいになって、3カ月目から少しずつ、近所のカフェなどに外出するようになりました。そして半年ぐらい経った頃に、やっと「この状態と付き合っていくしかない」と“諦め”の境地に立つことができました。どうしたら普通に生活できるかを前向きに考えられるようになって、休養から約10カ月後、仕事に復帰できました。

 その間、家族は全面的にサポートしてくれました。「ゆっくりして、仕事なんてしなくていいよ」といつも励ましてくれたのです。あまりに人と会わない時間が長かったので、友達と数カ月ぶりに会うとなったときには緊張しました(笑)。


今も高音の耳鳴りが24時間続いている

インタビューに答える緑川ちひろさん
緑川ちひろさん(C)日刊ゲンダイ

 めまいはほとんどなくなりましたが、右耳の聴力は落ちたままで、24時間、「ピー」という高音の耳鳴りが続いています。BGMが大きめの店内では、左耳を塞ぐと会話できないくらい聞こえが悪いです。ですからなるべく左耳で聞くように、相手の右側に位置を取るようになりました。向かい合った場合は、左耳をぐっと傾けることも多いです。

 今も3カ月に1度ぐらいのペースで通院して、薬を処方してもらっています。といっても、耳の血流を良くするものやビタミン剤や漢方薬です。根本的な治療ではないので、必ず飲まなければいけない薬ではありません。先生からも自分の加減でいいと言われているので、飲んだり飲まなかったりしています。

 突発性難聴の原因はよくわかりません。ネットの情報では、ストレスとされていることが多いですが、私にはストレスの自覚がありませんでした。ただ、自分は完璧にやりたいタイプだった自覚はあります。“自分ルール”が多かったんです。たとえば、食事のあとの洗い物をしないで寝るなんて絶対許せなかった。でも今は、明日でいいことは今日無理してやらないというか……。潔癖症ではないけれど、そういう傾向もありますし、周囲にも完璧を求めてしまうところがありました。今は意識してそれをしないように努めています。

 病気になって、つくづく「健康が一番」だと思いました。落ち込んでいたピーク時には、まったく人と関わらなかったでしょう? そうすると表情がなくなって、笑うことがなくなって、生きるパワーが落ちるんです。

 まだまだ完全に吹っ切れているわけではないけれど、徐々にこの耳に慣れてはきました。お仕事を再開したことも良い方向に作用しています。ただ、カラオケには行かなくなりましたし、音楽を聴くこともあまりなくなりました。さらにこの季節の湿度は聴力にとても影響します。空気が乾燥した冬よりも断然聞こえが悪くて、夏は本当に不便です。

(聞き手=松永詠美子)

▽緑川ちひろ(みどりかわ・ちひろ) 1993年、千葉県出身。商社OLを経て、2018年末にレースクイーンとしてデビューし、「ミス東スポ2020」でグランプリを受賞。グラビアアイドルとして活躍するほかWEBやイベントなどにも多数出演。渋谷クロスFM「ALICE矢沢透のなんでも応援団!」ではレギュラーでMCアシスタントを務める。


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