2025.09.16
くるまのニュースライター 伊勢崎剛志
「黄色いちょうちょ」のマークが貼られているクルマは、一体何を示しているのでしょうか。
あまり知られていないが「大事なサイン」です
クルマにはさまざまな「マーク」が貼られることがあります。
【画像】えっ…!? これが謎の「ちょうちょマーク」の正体です! 画像で見る!(30枚以上)
そのなかでも、「みどり地に黄色いちょうちょ」というマークは、一体何をアピールしているのでしょうか。

知らない人が多い「ちょうちょマーク」の意味
クルマに貼られるマークはさまざまです。よくみかけるのが「初心者マーク」や「高齢者マーク」です。
「初心者マーク」は普通免許を受けてから1年経過していない人が貼らなければならないもので、正式名称を「初心運転者標識」といいます。「高齢者マーク」は、「高齢運転者標識」といい、70歳以上が運転するときに、表示するように努めなくてはなりません。
このように、クルマに貼られるマークは「標識」にあたり、周囲の交通に対し、運転者の特性を知らせる重要なものとなっています。
そんな標識ですが、ときどき見かける「みどり地に黄色いちょうちょ」のマークは、「聴覚障害者標識(聴覚障害者マーク)」といいます。
名称の通り、聴覚障害者が運転していることを示すもので、この標識は必ず表示しなくてはならない「義務」となっています。
ちょうちょマークは比較的新しい標識で、2008年(平成20年)6月1日の道路交通法改正で設けられたものです。そのため、まだ見かける機会は少ないかもしれません。
実は当初、聴覚障害を持つ人は程度によってはクルマの運転ができませんでしたが、道路交通法改正で、一定の条件の下で運転が可能になりました。
具体的な聴覚障害のレベルは、補聴器を用いても10メートルの距離で90デシベルの警音器(クラクション)の音が聞こえない程度です。
周囲の音が聞こえない代わりに、運転時はこのちょうちょマークの表示とともに、補聴器を必ず装着したり、ルームミラーを通常より視野の広いワイドミラーや補助ミラー(特定後写鏡)を装着することが必須となっており、免許の条件が追加されます。
ちなみに、2012年(平成24年)4月1日の道交法改正では、聴覚障害者が運転できるクルマの種類が拡大され、貨物車や原付、二輪車の運転も可能になりました。
聴覚障害者の移動手段が増えたことだけでなく、クルマを運転する仕事に就いたりすることができるようになり、聴覚障害者のQOL(人生の質)が向上しました。
では、もしちょうちょマークを表示したクルマを見かけた場合、どうすればいいのでしょうか。
聴覚障害者はクラクションだけでなく、踏切や緊急車両のサイレンなどが聞こえにくい、もしくは聞こえない場合があります。そのため、周囲の交通は配慮することが必要です。
全日本交通安全協会・警察庁のパンフレットによると、「警音器の音では危険を認知できないことがある」とし、必要に応じて減速したり、徐行することが必要といいます。
また、ちょうちょマークを表示したクルマが合流や車線変更をしようとしているときは、積極的に譲ったり、いつも以上に車間を開けるなど、思いやりの気持ちを持つことが大切です。
なお、ちょうちょマークをつけたクルマに対し、幅寄せや割り込みをした場合は、5万円以下の罰金、違反点数1点と普通車では6000円の反則金が科されることがあります。
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周囲に聴覚障害であることを知らせるちょうちょマークですが、新しい制度ということもあり、運転免許取得者全体からみても、まだ非常に少ないのが現状です。
警察庁が発表している最新(令和6年・2024年)の運転免許統計によると、免許保有者約8174万人に対し、聴覚障害がある人(特定後写鏡等の使用が条件付けされている免許を持つ人)は1646人と、全体のわずか0.002%の割合です。
そのため、SNSなどでも「見たことない」「知らなかった」などの声があるなど、街中でみかける機会は多くなく、一般認知に欠けていることがあります。
聴覚障害者の移動を容易にするために、今後は免許保有者全体への、さらなる周知と浸透が課題といえそうです。
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