
毎朝の1杯のコーヒーには、眠気覚ましだけでなく心血管疾患や2型糖尿病、がんなどさまざまな疾患のリスクを低下させる効果があります。しかし、飲み過ぎると目覚まし時計のアラームが聞こえにくくなってしまうリスクがあることが、複数の研究により分かってきています。
Association of coffee consumption with the prevalence of hearing loss in US adults, NHANES 2003–2006 | Public Health Nutrition | Cambridge Core
Association between caffeine intake from foods and beverages in the diet and hearing loss in United States adults - PubMed
Your Morning Coffee Could Be Quietly Causing Hearing Loss, Study Reveals | Headphonesty
中国・広東薬科大学のQingsong Chen氏らは、2023年7月に発表した研究で、アメリカの全国民健康・栄養調査(NHANES)に参加した20歳以上の成人1894人の聴力検査の結果とコーヒー摂取量の関係を分析しました。
研究チームは、聴力検査のスコアを元に、参加者を会話を理解する能力に影響する音声周波数難聴(SFHL)と、アラーム音や鳥の鳴き声の聞き取りに関係する高周波難聴(HFHL)とに分類しました。また、コーヒーの摂取量は平均的な1日の摂取量に応じて「0杯」「1杯以下」「1杯」「2~3杯」「4杯以上」の5段階に分けられました。
その結果は以下の通り。2種類の難聴の両方で、コーヒーの摂取量が多ければ多いほど難聴の割合が高いという結果でした。

特に男性はコーヒー消費量とHFHLの関係が有意だったほか、非ヒスパニック系の白人が1日に4杯以上コーヒーを飲むとSFHLの割合が飲まない人の2倍近くに跳ね上がりました。
この研究は観察研究であるため、コーヒーの摂取と難聴との因果関係は証明されていませんが、コーヒーを飲む習慣が難聴につながる原因としては、カフェインが有力な候補としてあげられています。
カフェインは、疲れた時に体内で合成されるアデノシンと似ており、脳のアデノシン受容体に結合することで眠気を感じさせなくなる効果を発揮します。
実は、このアデノシン受容体は聴覚をつかさどる耳の器官である蝸牛(かぎゅう)にも存在しており、アデノシンは蝸牛への血流を悪化させて酸化ストレスを軽減させる働きを持っています。
つまり、コーヒーを飲んで摂取したカフェインが蝸牛への血流を悪化させてしまうことで、騒音にさらされた蝸牛がダメージから回復する能力が妨げられてしまう可能性があるということです。

特に、男性は女性より蝸牛が長いほか、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンには蝸牛を保護する機能があり、こうした違いが女性より男性の方がコーヒーによる難聴になりやすい要因ではないかと考えられています。
カフェインの摂取と難聴の関係は2024年7月の研究でも確認されていて、カフェイン摂取量が中央値より多い人は少ない人より難聴の割合が有意に高かったとのこと。具体的には、カフェインの摂取量が多い場合は少ない人に比べてSFHLリスクが10%から15.4%に、HFHLリスクは20.6%から30.5%に上昇しました。
とりわけ注意が必要とされているのが、20~64歳の比較的若い人です。なぜなら、若者は難聴の影響がすぐに出ないので、気づかないうちに耳へのダメージが蓄積してしまい、将来的に大きな問題になってしまうおそれがあるからです。
これらの研究結果を取り上げたオーディオマニア向けメディアのHeadphonestyは「コーヒーを飲むのをやめろと言っているわけではありませんが、リスクの高いグループの人は飲む量を見直した方がいいかもしれません」とコメントしました。
リンク先はGigazineというサイトの記事になります。
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コーヒーには「難聴」のリスクがあることが判明、若者と男性は特に注意
