
衰えた聴力を補う補聴器は高齢化の進展で需要が増している。だが、器具で耳を塞ぐため音がこもったり、一部の音域が聞こえすぎたりするストレスで、所有者の1割が全く使っていないとのデータもある。こうした中、補聴器の使用の決定や最適な機器選び、細かな調整で使用の継続をサポートするのが補聴器外来だ。
聴力の低下は加齢、中耳炎などの病気、耳の手術の後遺症などで起こり、中程度の難聴で補聴器が必要になる。
兵庫県西宮市の男性(87)は耳の内部にリンパ液がたまる「内リンパ水腫」が原因で右耳が聞こえにくくなり、補聴器を装着。2014年から兵庫医科大病院(兵庫県西宮市)の補聴器外来を受診している。外来では、医師や臨床検査技師ら多職種のチームで患者の悩みに寄り添う。定期的な診察と聴力検査、補聴器の細かな調整などをしてもらえるのがメリットだ。
男性には大きな音が割れて聞こえるという悩みがあり、3か月に1回通院し、耳に伝える音量を細かく調整している。加齢などで聴力低下がさらに進み、現在は両耳に装着しているが、付け心地は悪くない。「以前は歯を食いしばり、集中して聞くこともあった。装着後は自然に聞こえて心身の負担が減った」と喜ぶ。
主治医の 任にん 智美講師は「補聴器を手放すと日頃の会話や趣味に消極的になるので、装着を諦めてほしくない。補聴器外来に継続的に通って違和感を解消し、生活の質の維持につなげてほしい」と呼びかける。
子どもの先天性難聴にも対応している。片方を人工内耳、もう片方を補聴器にする「バイモーダル使用」を選ぶ患者などが対象だ。成長に応じて言語力や自然な発話が身についているかなどを検査し、言語聴覚士らが家族への助言を行う。
通院する女児(4)の父親(30歳代)は「補聴器を外したとき、大きな声であれば自然な音を聞くことができるのが親としてはありがたい。専門の先生に相談しながら今後を見守りたい」と話す。(村上和史)
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