2025.07.09

知っておきたい女性のからだと健康 第7回(前編)テレビのニュースは理解できるけれど、バラエティ番組での早口は字幕がないと理解できない、音量を上げないと聞こえない、子音が聞き取れないといった症状に気づいたら、難聴が始まっているかもしれません。東海大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科 教授の和佐野浩一郎先生に聞こえにくさの原因や予防、対応策について伺います。前回の記事はこちら>>
「聞こえにくさ」
[お話を伺った方]
東海大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授 同付属病院診療部 感覚器疾患センター長
和佐野浩一郎先生
わさの・こういちろう 2003年慶應義塾大学医学部卒業後、耳鼻咽喉科に入局。翌年関連病院に異動し、10年に帰局。静岡赤十字病院、米国ノースウェスタン大学留学、国立病院機構東京医療センターを経て、23年東海大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科准教授、25年から現職。医学博士。耳鼻咽喉科専門医、気管食道科専門医、臨床遺伝専門医。日本耳科学会賞など受賞多数
聴力低下で安全が脅かされ、認知症やうつのリスクも上がる
聴覚は原始的な能力で、哺乳類では耳の構造が共通しています。「ほとんどの動物は常に周囲の音を脳内で仕分けし、状況を把握しています。眠っていても音がすると目が覚めるのは、危険を察知するために聴力を使っているからです」と和佐野先生は説明します。
聴力が落ちると、車が近づいてきたときに気づけないなど身の安全を危うくする可能性があります。また、言葉を通じたコミュニケーションがしにくくなり、自然界の音や音楽も楽しめません。難聴は認知症やうつの大きな原因になることも知られています。
ヒトが実用的に使っている音の高さは約6オクターブの範囲で、「例えば、モスキート音(蚊の羽音)と呼ばれる高周波の音は年齢を重ねると次第に聞こえにくくなりますが、生活にはあまり支障はありません」。
聞こえにくくなる主な要因
●加齢
●中耳炎や耳小骨が硬くなって動きにくくなる耳硬化症などの耳の病気
●耳あかが詰まっている、あるいは耳掃除をしすぎて耳の中を傷つけた
●耳を含む頭部のケガ(打撲など)
●薬の副作用(結核の抗生剤など)
●髄膜炎や脳卒中(脳出血と脳梗塞)などの脳の病気
●騒音に繰り返しさらされること、あるいは爆音
●喫煙
●動脈硬化
●糖尿病
●摂取エネルギーの過剰
●運動不足
●遺伝的な要因 など
聴力検査では、125ヘルツから8000ヘルツの7段階の音の高さを調べます(ヘルツは1秒間に繰り返す電気の波の数=周波数の単位)。また、聞き取れる音量(音圧、単位はデシベル)も計測します。
「7段階のヘルツ数にそれぞれ音量があるため、聴力検査の結果は視力検査のように単純な数字にはできません。また、静かな場所で計測する必要があり、自動化もしにくいので、血圧計で血圧を測るように簡単に測定できないことが聴力検査が身近にならない理由です」と和佐野先生。
なお、一般的な健康診断や人間ドックで行われている聴力検査は80代くらいの聴力を調べているとのことで、「健診や人間ドックで聴力低下を指摘された場合、すでに中程度の難聴と考えられます」。
和佐野先生は1万人以上の聴力検査の結果をデータベース化し、“聞こえ年齢”を割り出したうえで、その計測機器を補聴器メーカーとともに開発しました。「薬局などで利用できるようにすべく取り組んでいるところです」
聞こえにくさのチェック
(主に加齢性難聴)
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、80歳で30デシベル(ささやき声が聞こえるくらい)の聴力(または補聴器をした状態で30デシベルの聴力)を保つことを目標とする『聴こえ8030運動』を展開しています。ホームページには「聴こえのセルフチェック!」が掲載されています。ぜひ試してみましょう。
(後半へ続く。)
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