【CES2025:デジタルヘルス編】遠隔診断・検査を“いつでも・どこでも”可能にする製品/サービスが主軸に

【CES2025:デジタルヘルス編】遠隔診断・検査を“いつでも・どこでも”可能にする製品/サービスが主軸に

リング型やメガネ型のウェアラブルデバイスの差異化競争も激化

野々下 裕子(NOISIA:テックジャーナリスト)2025年2月3日

世界最大規模の国際テックイベント「CES」では、医療や健康に関するデジタルヘルス関連の展示が増える傾向にある。主催者のCTAも注目分野として扱っている。2025年は、遠隔医療やセルフ予防、ウェアラブル、エイジテックといった分野で実際に“使える”技術の展示が目立っていた。

 米ラスベガスで毎年1月に開催される国際テックイベント「CES」では近年、医療や健康をテーマにしたデジタルヘルス分野の出展が増えている。CESを主催するCTA(Consumer Technology Association:全米民生技術協会)は、注目すべき製品の表彰制度「イノベーションアワード」を実施しているが、全33カテゴリーのうちデジタルヘルス関連ではAI(人工知能)分野に次いで多い49製品が受賞した。エイジテックとアクセシビリティを含めれば65製品。AI分野での受賞にもデジタルヘルス関連が目に付いた。

 CESでのデジタルヘルス関連の展示は当初、フィットネスやジム、スポーツ向けが中心だった。そこから体温や心拍、睡眠、メンタルなどをセンシングし、健康状態を可視化/ケアするためのツールやサービスに発展。コロナ禍以降は、遠隔医療やスマートフォン用アプリケーションで治療するデジタルセラピューティクス、医療現場で用いる診療・手術のための専門機器も出展されている。


(中略) 


スマートグラスは音のテキスト化で“見える補聴器”へ

 健康状態の可視化では、日常的なモニタリングで体調や健康管理するウェアラブルデバイスが一気に普及しそうな勢いだった。なかでもスマートリングはすでにOURAリングや日本でも2月に発売されるSamsungリングがヒットしており、類似製品が会場のあちこちで見られた(写真6)。

普及の兆しを見せるスマートリングは、センシング機能と価格で違いを打ち出している

写真6:普及の兆しを見せるスマートリングは、センシング機能と価格で違いを打ち出している


 スマートリングは、その見た目だけからは、機能などの違いがほとんど分からない。各社は、連続使用時間や、検知できる生体情報の種類と精度、装着のしやすさやデザインなどで差異化を図ろうとしている。今後は、サブスク型か買い切りかといった販売戦略での競争も激化しそうだ。

 同じく多数の出展があったスマートグラスは、AI技術の取り込みにより、アクセシビリティ分野での活用も増えそうだ。例えば米Xanderは、会話を記録し家族と共有するなど認知障害のサポート機能を持つ「XanderGlasses Connect」でイノベーションアワードを受賞した(写真7)。「Vuzix Shield Smart Glasses」をベースに、26言語の翻訳や環境音をキャプション表示できる。同社は前年も、マイクで拾った声をテキスト表示する“見る補聴器”でイノベーションアワードを受賞している。

「XanderGlasses Connect」はスマートグラスで認知障害をサポートする機能を提供する

写真7:「XanderGlasses Connect」はスマートグラスで認知障害をサポートする機能を提供する


 話し声をテキスト化する機能を持つスマートグラスは多数見られた。ほとんどは見た目が普通のメガネで、スマホと連携しAI検索や翻訳の機能をフリーハンズで利用できる。実際に試していみると、CES会場のような賑やかな場所でも相手の話を可視化できたことから、見る補聴器として打ち出すメーカーも増えそうだ。

使っていることが分からないインビジブルなデザインがカギに

 前回、テキスト表示機能を持たず、一般的な補聴器として使えるスマートグラス「Nuance Audio」を発表した伊EssilorLuxotticaは今年、AI技術を使ったノイズ低減と音声強調技術を持つ仏のスタートアップPulse Auditionを買収し、眼の前で見ている相手の声だけを聞こえやすくするタイプをリリースした(写真8)。同社は米Metaのレイバンサングラスも開発している。

スマートグラス「Nuance Audio」は見ている相手の声だけが聞こえる

写真8:スマートグラス「Nuance Audio」は見ている相手の声だけが聞こえる


 聞こえにくさは認知症にもつながっていく。世界的な長寿時代に入り、エイジテックは老いのサポートだけでなく、年齢を重ねても若々しさを維持できるよう、身体機能を拡張する機能が求められ始めている。

 WHO(世界保健機構)は2019年、若者を中心に世界で11億人が難聴リスクにさらされていると発表している。聞こえをサポートするヒアラブルデバイスは高齢者だけが対象ではなくなっている。高齢者、若年者共に装着時の見た目も大事になり、使っていることを他者が気づき難いインビジブルなデザインが求められると考えられる。

 ヒアラブルに関しては、生体情報を収集したり、睡眠をサポートしたりとヘルスに向けた製品も多数見られた。使用するセンサーやチップ、バッテリーの小型化など、この領域の製品を実現するための周辺技術も出展されており、2026年には具体的な製品として発表されることを期待したい。

リンク先はデジタルクロスというサイトの記事になります。


 

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